月は、上りて 参【煉獄杏寿郎】

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こんにちは。
今にも誘拐されそうな竈門Aです。
…誰か助けてください。


「…待って、くださいっ…話が見えなくて…！杏寿郎さん、どうか落ち着いてくださいっ…」



ガシリと腕を掴まれて後退ることすらできない。
何故こうなったかはわからないが、とにかく自分を蝶屋敷から炎柱邸に連れていきとんでもないことをしようとしているのだけは伝わった。


「俺は落ち着いている。観念しろ」

「きゃ、」


煉獄がその羽織を脱いでAの体に巻き付ける。
芋虫のようになったAを横抱きにして抱き上げた。


「これで寒くはないだろう」

「…ひ、待ってください…！ま、まだ入院中なんですけどっ…！」

「後で胡蝶に文でも送っておこう」


平然とそうのたまう煉獄にいよいよ真っ青になるA。
そして煉獄が今にも地面を蹴ろうとしたその時…。






「何をなさってるんですか」







天の助けがやってきた。



「む、胡蝶！」

「し、しのぶ様…」


うふふ、と笑いを崩さない胡蝶はこちらにつかつかと歩み寄ってくる。


「煉獄さん？もう一度聞きます。何をなさってるんですか？彼女はまだ退院許可を出していませんし、機能回復訓練も行っていません。なのにどうして勝手に外に連れ出そうとしているのですか？」

「ぐ、それは」


流石の煉獄も胡蝶のどす黒い笑みには引きぎみだ。



「少し二人で話をしなければならないのでな！」

「ならば蝶屋敷の部屋を貸します。病室に人払いをしてもいいですし。連れ出す必要はありませんよね？」

「む……」


胡蝶はゆっくりと言い聞かすように言った。


「何をなさるかは想像がつきますが…今無茶をさせてAさんの退院が先延ばしになったらどうするのですか？妹を人に戻したいと、炭治郎君と必死に戦っているAさんをずっと蝶屋敷に縛り付けておくのですか？それが恋人のすることですか？」


胡蝶は強い(色んな意味で)。
あの煉獄を言葉だけで言い負かしている！とAは感動すら覚えていた。



「奥の部屋をお貸しします。きちんと話し合ってください。ただし彼女の体を第一に考えての行動をお願いしますね」


…あ、救出してはくれないんだ。
ちなみにAは芋虫状態で煉獄に抱かれたまま大人しく成り行きを見守っている。
何か言え？嫌です。
命、大事だね！



煉獄は「あいわかった！」と胡蝶に案内されて廊下を進んだ。
当然Aはされるがままだ。



「………(この簀巻きの状態を何とかして欲しい)」

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