月は、上りて 参【煉獄杏寿郎】

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「あぁ！確かに音はしたかもしれん！」

「おい、A。お前フラフラじゃねぇか」

「…それは…一ヶ月まともに歩いてなかったからで…」


そう言いながらも目はチラチラと宇随を見てしまう。
いやだって、倒れてる白目の美男子がいたら気にしない方がおかしい。


「む、君は見なくていい！」


羽織をマントのように手繰り寄せAの視界を遮る煉獄。
見たから。
バッチリ見たから！


「とにかく、お前は戻っていろ。何ならそこにいる音柱の奥方たちに送ってもらえ」

「……師範たちは」

「ん？もうすこーし時間がかかるな！」


爽やかに言う雨宮に煉獄も頷く。


これはマズイ。
これは宇随の命日が決まってしまうかもしれない。
いや、祭りの神だから死なないのか…？とにかく止めないと、なんか不味いことになりそう。

そう思ったAは咄嗟に煉獄にギュッと抱きついた。


「っ…！A…？」

「……き、杏寿郎さんがいないと、寂しい…から…一緒に病室に行きませんか…？」

「っ……！！」


そっと顔を上げ、上目遣いで煉獄をじっと見る。
何故か煉獄は片手で口を押さえ、額にはピキリと青筋が浮き出ていた。


「っ、君は…！俺を試しているのか！？そうなのかっ…」

「……？」


すると様子を見ていた雨宮がはぁーっ、と溜息をついた。


「何か、気が抜けたわ…おい炎柱…俺の弟子に無体を強いるのは許さねぇぜ…？」

「……わかっております」

「それとA。お前は今度音柱の嫁殿たちから男について学んでおけ」

「……？わかりました」



その肝心の嫁殿たちは、倒れている夫を囲んで談笑中だ。



「音柱もこの辺で許してやるか。嫁殿たち、すまねぇが回収は頼む」

「はい。私達で連れて帰りますわ」


雛鶴はにこりと笑い、後ろではまきをと須磨が宇随を起こしていた。


「じゃあな、A。俺はこれからお館様に用事があるからこれで帰るぜ。炎柱、またな」

「…はい」

「雨宮殿もお気を付けて！さぁ、病室に戻るぞ」


煉獄は自然な流れでAを横抱きに抱き上げると道場を出た。




そして。


「んむ、んっ」

「ほら、集中」



ベッドに座った煉獄の膝の上に座らされたと思ったら、触れるだけの口付けが降ってきた。


「ん…んっ、しすぎっ…杏寿郎さんっ」

「あのような可愛いことを言っておいて何を言う」

「ん、んんっ」



チュッ、チュッとわざと音を出すように唇を触れ合わせる。
Aは赤くなりながらもそれを素直に受け入れた。

炎の海に溺れる※→←.

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