月は、上りて 参【煉獄杏寿郎】

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先に結果を言ってしまおう。
勝負はつかなかった。

というのも、木刀が途中で粉々に折れてしまったのだ。
そこで組み手を始めた二人だが、中々決着がつかず……そろそろ動けなくなりそうだからとAが二人を止めた。


「あ、あの…そろそろ終わりにしていただいて…」

「あー…もう夕方か…おい、炎柱…終わりだ」

「っく…はい」


どちらも傷だらけ痣だらけである。
これはやむを得ないよね…とAは一人ずつ手を翳して傷を癒していく。


「む！A、君は大丈夫なのか？」

「はい。きちんと加減しながら使えば、前みたいに倒れたりはしないです」



二人の傷を治すと、夕餉の支度を頼むと師範に台所へ向かわされる。
ついでに茶を煎れてくれと言われた。





雨宮は茶を置いたAが去ったことを確認すると煉獄に座るよう促す。


「お前、あいつをどう思ってる」

「何よりも愛しく大切に思っております！今は恋人ですがいずれは…」

「妻に娶るか？」

「はい！」


雨宮はガシガシと頭を掻いた。


「…お前は柱合裁判で考え無しにあいつの家族を殺そうとした」

「っ、……」

「勿論、鬼殺隊としては正しい判断だ。だがお館様の意向を汲み取れず短慮な判断をしかけたことは事実だ」

「………はい。承知しております」

「Aはお前を嫌って恨んでいた…筈だったのになぁ」


雨宮は遠い目をした。
あの裁判で、Aは炭治郎と禰豆子を斬首すべきだと提案した煉獄を確かに嫌悪の目で見ていた。
それはそうだろう。きっとAの煉獄に対する嫌悪感は当分消えないだろうと思っていた。
それがどうして。


「なーんで惚れちまったのかねぇ…あいつも」


雨宮は小さく呟いて煉獄を見つめた。


「炎柱、これだけは言っておく。あいつは…あの兄妹は鬼舞辻無惨を倒すに当たっての重要な歯車になるだろう。おそらくあの二人は鬼殺隊の運命を変える」

「………！」

「そして、Aは…治癒の力を持つがゆえに幾度も悩み、苦しむだろう。あいつは優しすぎる。…お前はそんなAの側にいてやれるか？何があっても裏切らず、支えてやれるか？」



何と重いことを聞いているのだろう。
鬼殺隊でなければ、煉獄をAに縛り付けるようなことを聞かなくて良かったのに。




「無論です！俺は彼女が愛しい。笑っていて欲しいし、辛いことは打ち明けて欲しい。俺の手で幸せにしたい、心からそう思っております。一人の男として、時には上官として彼女を支えます！」

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