月は、上りて 参【煉獄杏寿郎】

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翌日の昼。
定期連絡のために決められた建物の屋根に集まったAと炭治郎(と禰豆子)。
ちなみに善逸と伊之助はまた別の時間帯だ。宇随曰く、全員が一度に集まると目立って鬼に気づかれる可能性があるらしい。


「何かわかったか」

「最近"足抜け"や死人が多いと…特に転落死が…」

「…それは間違い無く鬼の仕業だな」

「……宇随さん。これを」


Aは鯉夏に貰った日記を渡し、須磨についての噂を伝えた。


「……宇随さんなら、わかりますか？それは…須磨さんの筆跡ですか？」

「………違うな。でかした、これで須磨の行方不明は明らかに偽造されたものだと確信した」

「じ、じゃあ今まで足抜けでいなくなった人たちは……」

「恐らく鬼の偽装だな。だが、何でそんな手の込んだことをするのか……」


三人は暫く話し合った後、それぞれ元の場所に戻っていった。









その夜。
鯉夏は客を取ったらしく今日は来ない。
控え室で習ったばかりの三味線を弾いていれば従業員が慌ててやってきた。


「Aちゃん！貴方を指名してきた方がいるのだけど…」

「…え、あの…私、まだ…お客様は…」

「そうなんだけど…どうしても貴女がいいって大金を出してきてね…女将が出ろっていうのよ」

「…………わ、わかりました」


ここで拒めば騒ぎになってしまうだろう。
すぐに体に触られる訳じゃない。そう思って自分を奮い立たせたAは立ち上がる。


すぐにきらびやかな着物を着せられ、化粧を施される。
すると炭治郎が真っ青な顔をしてやってきた。


「あっ！A……お、前…逃げた方が…」

「…？でも、行かないと…。大丈夫、任務だから、頑張る」

「そうじゃなくて、来てるのが……れ「炭子ちゃーん！Aちゃんは大丈夫だから大至急こっちに来て！すぐ片付けなきゃいけないの！」



何か言いかけた炭治郎だったが、走ってきた従業員によって連れていかれてしまった。


「(…何か、言いかけてたような……)」


あの炭治郎が青ざめるくらいだからよほど悪い客なのか。
いや、いざとなったら全集中の呼吸を駆使してでも相手を気絶させればいい。


「終わったよ。中々綺麗じゃないか！あんたを指名した客もかなりの美丈夫だって禿たちが騒いでたからさ！頑張んなよ！」



背中をポンと押されたAは微妙な顔で部屋に向かった。

教わった通り正座して静かに声をかける。



「お待たせ致しました。Aでございます」



そして静かに襖を開けた。

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