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煉獄が戻ってくると千寿郎に挨拶をして三人は帰路に着いた。
途中甘味屋に寄っていこうと煉獄が提案したが、炭治郎は善逸たちと約束しているとの事で先に帰った。
「君と来るのは二度目だな!」
「…はい。逢い引きの時ですね」
席につくと注文を済ませる。
煉獄はそっと手を伸ばすとAの髪に指を絡めた。
「…君は、耳が痛いことを言ってくれる」
「え?」
「父上のことだ。…俺は父上がああなった後、炎の呼吸を修得すべく稽古を重ねた。炎柱になれば父上も喜んでくれるだろうと。しかし…父上は変わらなかった。…それでも俺の心は折れなかったが…どこかで諦めていたのかもしれないな」
「……」
「千寿郎のためにも良き兄に、父上のためにも立派な息子に、と。だが父上とぶつかり、腹を割って話すということはしなかった。部屋に籠った父上に挨拶以外で話しかけることも殆んどなかった」
何を言っても無駄だ、才能がない。剣士をやめろと。
それは鬼殺隊という命懸けの仕事を辞めて欲しいという親心も含まれていたのだと思う。
けれど。
「…私、嫌いなんです」
「ん?」
「……よくあるじゃないですか。親が冷たかったけど、後で周りが「実はあの時一番心配してたんだ、不器用だからあんな態度をとってしまったんだよ」って話。…それが死んだ後に言われるとお涙頂戴の話になりますけど……」
「む、」
「…親子でも言わないと、態度に出さないと伝わらないと思います。後であの時は…って言われても、冷たくされたのもそれで傷ついたのも事実ですし」
要は【後出し】が嫌いなのだ。
きっと煉獄の父は不器用な面もあるのだろう。
だからって煉獄や千寿郎、炭治郎を貶されると腹が立つ。
とても腹が立つ。
最終的にはそれに尽きる。
「…私が言うのもおかしいですが不快ではないのですか?」
「まぁ…父上に明らかに非があるのは事実だからな。竈門少年にも手を出してしまったし、あれは流石に俺から見てもやりすぎだ。……ふふ、君は啖呵を切った割には気にするのだな」
「それは………」
紛いなりにも好きな人の身内だから。
そう小声で呟いたA。それは煉獄の耳にしっかり届いていたが、それでもにこにこと笑って言った。
「ん?聞こえないな」
「…何でも、ないです」
「可愛い恋人に隠し事をされるのは心が痛むな!」
「………何も言っていません」
「ではもっと近寄らないといけないな!」
頼んだ品が来るまで二人の問答は続いた。
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ゆり(プロフ) - あの…舐めるとか刺激が強すぎるので※付けてもらえませんか… (2021年8月14日 2時) (レス) id: 3faa843c0c (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - ohyutayaさん» 言いました!しかし本人は言った瞬間気付いておりません(^-^) (2021年8月8日 17時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ohyutaya(プロフ) - 私の煉獄さんってサラッとすごいこと言いましたね (2021年8月8日 17時) (レス) id: a99629f64d (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 晴琉-haru-さん» ありがとうございます(^-^)更新頑張って煉獄さんへの愛をぶつけていきますので、よろしくお願いします! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 空さん» ありがとうございます!夢主ちゃんにはいつでも瞬時に反応する煉獄さんです! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫音 | 作成日時:2021年7月17日 16時