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「…前、に…?」
「そうだ。いくら悔やんで立ち止まっても時間は止まってはくれない。君の兄たちも己の不甲斐なさに打ちのめされ、今は強くなろうと鍛練を重ねている」
「……はい」
「心を燃やせ、竈門少女。君の力は素晴らしい。こんなことで立ち止まっていないで更にその能力を伸ばすと良い」
「…は、いっ…!」
煉獄の言葉にAの胸のつかえがスッと溶けていくようだった。
雨宮は"高望みするな"と言った。
まさにその通りだ。今のAの力では、煉獄の傷を全て完治させるなど無理だった。
だからこそ…同じことを繰り返さないように強くならなければならない。
心も、体も。
罪悪感に浸ってウジウジしてる暇はないのだ。
「……ありがとう、ございます。炎柱様……お陰でとても心が軽くなりました」
「うむ!後輩の成長を促すのも柱の役目だからな!」
先程までの冷たい空気が和らぎ、煉獄も笑顔を見せた。
それに安堵したAは今度こそ去ろうと体を動かそうとして…
「何処に行く?まだ終わりではないぞ」
「……え」
「君に避けられ続けて辛かったぞ、竈門少女。…悪い子には仕置きをせんとな」
右腕は横についたまま、左手でするりと頬を撫でられる。
スゥッと目を細めて見つめられ、Aの体が凍りついた。
駄目だ。この目は、逆らえなくなる。
「…あ、あ、の…」
「ふむ。そしたら、君の返事を今ここで聞かせてもらおうか?」
「はい?」
「任務前に君に思いを告げただろう?その返事だ」
ニコリと笑う煉獄に、Aはカァっと赤くなる。
途端に例の"幸せな夢"を思い出した。
「どうした?任務が終わったら聞かせてくれると約束しただろう?」
「あ、あ…あの…」
あんな夢を見ていなければもっと冷静に答えられた。冷静に私では釣り合いませんと断れたかもしれない。
けれど、知ってしまったから。
自分の"幸せ"を。
煉獄への気持ちを。
「……そ、その」
「うむ」
煉獄は黙ってAを見つめている。
催促はしないが、決して逃がてはくれないだろう。
泣きそうになりながら、Aは両手で顔を覆った。
「ゆ…夢…」
「ん?」
「…無限列車、で…下弦ノ壱に、眠らされた時…夢を、見ました……」
「…………」
「………炭治郎が、"鬼がその人間にとって幸せな夢をみせていた"と教えてくれて……」
Aは蚊の鳴くような声で言った。
「……え、炎柱様を…"深い仲の男性"として家族に紹介する夢です……」
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ゆり(プロフ) - あの…舐めるとか刺激が強すぎるので※付けてもらえませんか… (2021年8月14日 2時) (レス) id: 3faa843c0c (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - ohyutayaさん» 言いました!しかし本人は言った瞬間気付いておりません(^-^) (2021年8月8日 17時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ohyutaya(プロフ) - 私の煉獄さんってサラッとすごいこと言いましたね (2021年8月8日 17時) (レス) id: a99629f64d (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 晴琉-haru-さん» ありがとうございます(^-^)更新頑張って煉獄さんへの愛をぶつけていきますので、よろしくお願いします! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 空さん» ありがとうございます!夢主ちゃんにはいつでも瞬時に反応する煉獄さんです! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫音 | 作成日時:2021年7月17日 16時