検索窓
今日:91 hit、昨日:201 hit、合計:356,646 hit

. ページ21

温かい家族だった。
あの、悲劇の日がなければずっとこうして過ごせたのだろうか。


Aの目から涙が溢れる。

ここにいたい。
この温かい空間にいたい。

ねぇ、誰か教えて下さい。
ここから離れたくないと思うのは、弱さですか?


その時、厳しい声が後ろから飛んで来た。


「君がいるべき所はここではないだろう。思い出しなさい、君がやるべきことを」


後ろから煉獄の手が伸びてきてAの目を覆う。


「妹を救うと決めたのだろう?鬼を倒すと決意したのだろう?その為に刀を握り、つらい修行に耐えた。俺はそんな君の姿に惹かれたんだ」

「…っ、そう…禰豆子を、救うの…。鬼を…倒すの…」

「お姉ちゃん…?」


禰豆子が首を傾げた。


「ならば君がすべきことをやりなさい。……そして、俺を……」



その先を聞く前に、煉獄は風に溶けるように消えた。



「え!煉獄の兄ちゃん!」


「……皆、ごめん…!ごめんね!助けられなくて、側にいてあげられなくて、本当にごめんなさい!……でも、私は、やるべきことを、やらなくちゃいけないから……!」



Aはそう叫ぶと、家族たちに背を向けて一目散に走り出した。


ここにいられたらどんなに良かったか。
家族と笑って過ごし、煉獄に愛されて。
何と幸せな日々だろう。



「お姉ちゃん!」

「置いてかないで!」


後ろから聞こえる声にまた涙が溢れた。
止まりたくなるのを、必死に堪える。
もう、ここは私の居場所ではないのだから。



痛かったでしょう。
怖かったでしょう。
禰豆子、それでも弟を逃がそうとしてくれたんだよね。玄関前に倒れていたもんね。
お姉ちゃんなのに、側で守ってあげられなくて本当にごめんなさい。
お母さん、産んでくれてありがとう。
お母さんと一緒に料理したの、凄く楽しかった。
決して裕福ではなかったけど…そんなの、全然気にならなかった。
本当に幸せだったんだよ。
だから
せめて
せめて、
……貴方たちの分まで、炭治郎と禰豆子と生きるから…






一人雪の中に佇むと、Aは刀を抜いた。


杏寿郎さん、いえ…"炎柱様"。
ありがとうございます。
貴方が背を押してくれなかったらここから動けなかった。




『切るべきものは…自分自身だ』




刀身を首に当てる。


「はぁっ…はぁっ…」


怖い。
自分で自分の首を切るなんて。
でも。


「っ、ぁぁぁ!」


Aは思い切り刀を引いた。



痛みと共に血が飛び散り………Aの意識はそこで途絶えた。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (241 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
614人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆり(プロフ) - あの…舐めるとか刺激が強すぎるので※付けてもらえませんか… (2021年8月14日 2時) (レス) id: 3faa843c0c (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - ohyutayaさん» 言いました!しかし本人は言った瞬間気付いておりません(^-^) (2021年8月8日 17時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ohyutaya(プロフ) - 私の煉獄さんってサラッとすごいこと言いましたね (2021年8月8日 17時) (レス) id: a99629f64d (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 晴琉-haru-さん» ありがとうございます(^-^)更新頑張って煉獄さんへの愛をぶつけていきますので、よろしくお願いします! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 空さん» ありがとうございます!夢主ちゃんにはいつでも瞬時に反応する煉獄さんです! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紫音 | 作成日時:2021年7月17日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。