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温かい家族だった。
あの、悲劇の日がなければずっとこうして過ごせたのだろうか。
Aの目から涙が溢れる。
ここにいたい。
この温かい空間にいたい。
ねぇ、誰か教えて下さい。
ここから離れたくないと思うのは、弱さですか?
その時、厳しい声が後ろから飛んで来た。
「君がいるべき所はここではないだろう。思い出しなさい、君がやるべきことを」
後ろから煉獄の手が伸びてきてAの目を覆う。
「妹を救うと決めたのだろう?鬼を倒すと決意したのだろう?その為に刀を握り、つらい修行に耐えた。俺はそんな君の姿に惹かれたんだ」
「…っ、そう…禰豆子を、救うの…。鬼を…倒すの…」
「お姉ちゃん…?」
禰豆子が首を傾げた。
「ならば君がすべきことをやりなさい。……そして、俺を……」
その先を聞く前に、煉獄は風に溶けるように消えた。
「え!煉獄の兄ちゃん!」
「……皆、ごめん…!ごめんね!助けられなくて、側にいてあげられなくて、本当にごめんなさい!……でも、私は、やるべきことを、やらなくちゃいけないから……!」
Aはそう叫ぶと、家族たちに背を向けて一目散に走り出した。
ここにいられたらどんなに良かったか。
家族と笑って過ごし、煉獄に愛されて。
何と幸せな日々だろう。
「お姉ちゃん!」
「置いてかないで!」
後ろから聞こえる声にまた涙が溢れた。
止まりたくなるのを、必死に堪える。
もう、ここは私の居場所ではないのだから。
痛かったでしょう。
怖かったでしょう。
禰豆子、それでも弟を逃がそうとしてくれたんだよね。玄関前に倒れていたもんね。
お姉ちゃんなのに、側で守ってあげられなくて本当にごめんなさい。
お母さん、産んでくれてありがとう。
お母さんと一緒に料理したの、凄く楽しかった。
決して裕福ではなかったけど…そんなの、全然気にならなかった。
本当に幸せだったんだよ。
だから
せめて
せめて、
……貴方たちの分まで、炭治郎と禰豆子と生きるから…
一人雪の中に佇むと、Aは刀を抜いた。
杏寿郎さん、いえ…"炎柱様"。
ありがとうございます。
貴方が背を押してくれなかったらここから動けなかった。
『切るべきものは…自分自身だ』
刀身を首に当てる。
「はぁっ…はぁっ…」
怖い。
自分で自分の首を切るなんて。
でも。
「っ、ぁぁぁ!」
Aは思い切り刀を引いた。
痛みと共に血が飛び散り………Aの意識はそこで途絶えた。
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ゆり(プロフ) - あの…舐めるとか刺激が強すぎるので※付けてもらえませんか… (2021年8月14日 2時) (レス) id: 3faa843c0c (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - ohyutayaさん» 言いました!しかし本人は言った瞬間気付いておりません(^-^) (2021年8月8日 17時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ohyutaya(プロフ) - 私の煉獄さんってサラッとすごいこと言いましたね (2021年8月8日 17時) (レス) id: a99629f64d (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 晴琉-haru-さん» ありがとうございます(^-^)更新頑張って煉獄さんへの愛をぶつけていきますので、よろしくお願いします! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 空さん» ありがとうございます!夢主ちゃんにはいつでも瞬時に反応する煉獄さんです! (2021年8月5日 9時) (レス) id: 9d2f0b0ee2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫音 | 作成日時:2021年7月17日 16時