金魚 -Kaito N- ページ1
私は赤い金魚を飼っている。
その金魚は、いつの間にか私の部屋に棲むようになって、いつも同じ場所でひらひらと漂っている。
いつもぼーっとしてるくせに、目が合うとにっこりと笑うんだ。
その金魚を見ているだけで私は癒される。
だから今夜も、家路を急ぐ。
玄関のドアを開けると、金魚はひょこっと顔を覗かせる。
「おかえり」
って、邪心なんか全くないような笑顔で。
「今日は何してた？」
「んー…、テレビ見たり、本読んだりしてたよ」
嘘つき。
金魚が嘘をついてる時はすぐわかる。
絶対に目を合わせないんだ。
昼間の金魚は何をしてるのか全然わからなくて、でも夜に私が帰ってきたらちゃんと部屋にいる。
そして、たまに、
「Aさん、欲しいものがあるんだけど」
って、おねだりしてきたりもする。
でも欲しいものをねだるんじゃなくて、それを買うお金を欲しがるんだ。
でも「お金ちょうだい」なんてストレートなことは言わずに、「欲しいものがある」なんて優しい言葉で、いつも私を騙す。
金魚は、そういう男だ。
私が海人のことを、脳内で金魚と呼び始めたのは、
初めて出会った夜に、綺麗なくすんだ赤のひらひらしたシャツを着ていたからだ。
風が吹く度に、長めのシャツの裾がひらひらとはためいて、まるで水槽の中で泳いでいる金魚のように見えたから。
「Aさん、欲しいものがあるんだけど」
「いくらで買えるの？それ」
私はわざと何が欲しいのかを聞かない。
いくらするかを聞くだけ。
「７…万？」
…驚いた。
いつもは１万円とか、多くても２万円なのに。
７万円を渡すと、海人は猫みたいに可愛らしく微笑むと、
「ありがとう、Aさん」
って、背中からぎゅーっと抱きしめてくた。
たぶん、海人は出て行っちゃうんじゃないかな。
そう思った。
７万円を持って、今度はもっと大きい水槽のある女の子の家に棲み付くんだろうな。
海人がこの部屋に来てから、いつかこんな日が来るんじゃないかって思ってたんだ。
深夜、寝付けずに寝返りを打つと、隣で海人がぐっすり眠ってるのを見て、少しだけ安心した。
よかった、まだいた。
そっと髪を撫でると、寝ているはずなのに海人はくすぐったそうに笑う。
やっぱり海人は可愛い。
ずっとペットみたいに私の傍にいてくれたらいいのにな。
そうしたら私は、貯金をはたいて海人の一生を買い占めるのに。
END
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わかめん(プロフ) - ちあきさん» コメントありがとうございました。チョコミントも読んでいただいて感謝感激です。天才とか！！！畏れ多いですが、そんな風に言っていただけてうれしいです(/ω＼) (2018年4月1日 21時) (
レス) id: b9a73f2b64 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - チョコミント〜の作品を読ませていただいていて、こちらに飛んできました。ほっくんの短編を読ませていただきました。天才ですね（語彙力） (2018年3月19日 0時) (レス) id: a4f7d39adb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかめん x他1人 | 作成日時：2018年3月14日 18時
