第20話 ページ22
凄まじい勢いでいなくなった椿。
全員がポカンとして固まっている。
あの子、あんなにせっかちさんじゃなかったはずだけど…。
でも、まぁ……
「ふふっ、あの子楽しそうでしたね。」
「え、あれで…?」
鬱さんは困惑しているが私にはわかる。
私と話しているときと似たような、
煽ったり怒ったりするけど、どこか楽しそうな顔。
あとでお返しにからかってあげましょう。
楽しみだわ。
「トンちはなんで来たん?今日仕事じゃなかった?」
「あぁ、グルさん。もう時間です。」
「…そうか。」
「服はそのままでいいんで、早く鞄取ってきてください。」
「……あぁ。」
少ししょんぼりとしながら階段を上がっていく後ろ姿を見つめる。
そう、お仕事なの。
なら、昼食は1人ね。
「にしても、グルちゃんがあんなにベタ惚れとは思わんかったな。」
「めっちゃ睨んでくるしな!」
「そんなこと……。」
ないわ。
私はグルッペン様が誰か睨んでいるところは見たことがないし、
最初から微笑んでいてくださった。特段、特別な扱いは……。
…………家に住まわせていただけるのは、まぁ…そうなのかな、とは思いましたけど。
期待は油断のもとになるわ。
常に1歩引いて、謙虚になにも求めずに……。
そんなのできないけれど、お父様は……。
でも、お母様は押せばどうにかなる…と。
……どうして反対のアドバイスをするのですか。
「待たせたな。」
「いえ、じゃあ行きましょうか。」
「ちょっと待ってください。」
私はお母様を信じるわ。
……もしかしたらお父様の案を使うときもあるかもしれないけれど…。
靴を履こうとするグルッペン様を呼び止める。
「グルッペン様、少し屈んでいただいても?」
「…?はい。」
「失礼しますね。」
白い頬に軽くリップ音をたてて口付けをした。
至近距離だと、匂いも体も近くに感じられていいわね。
「行ってらっしゃいませ。お仕事頑張ってください。」
体離し、1歩下がり、
軽く礼をして、微笑む。
私にできる精一杯です。
トントンさんはニヤつきを隠せないという顔。
後ろの二人はアワアワと忙しない。
当のグルッペン様は目を丸くして、放心状態のまま、
「……あぁ、行ってくる。」
そう言ってトントンさんを置いて出ていった。
……緊張したわ。
570人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルリ(プロフ) - すっっごく面白いです!!!応援してます!!更新頑張ってください!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ふう(プロフ) - うへぇ…お帰りです〜、椿ちゃんのほうも復活ですか? (2019年9月23日 18時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
はったり - 推しが毒素だからいいのだけれどトントンとくっつくと思うとチクチク来るなぁ (2019年9月23日 16時) (レス) id: 41ac5a4538 (このIDを非表示/違反報告)
雨ヶ谷 Q(プロフ) - まむしさん» あ、良かったです、心置き無く読者に戻ります〜大好きです! (2019年9月9日 1時) (レス) id: 979aff1ee1 (このIDを非表示/違反報告)
まむし - わかりました!!あ、ご迷惑をおかけしました…! (2019年9月9日 1時) (レス) id: a1ee0471bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まむし x他1人 | 作成日時:2019年8月12日 21時