誰だったっけ…？ ページ5
自分の両手を見ても足と同じで猫の手になってる。
俺は道に並んでいるお店のショーウィンドウの一つを覗き込もうとした。
うわ、なにこれ。
立とうとしても上手くバランスがとれなくて四つん這いになってしまう。
それでもどうにかして前足を壁に置いて体を支えて覗き込むと、
「え、…これ、が、俺…？」
そこにはさっき俺が助けたはずの猫がうつっていた。
｢は？…なにこれ、…猫ぉっ！？｣
何回もふもふの前足で目をこすっても、変わらずショーウィンドウの中には猫の俺。
「…ほんとに猫になっちゃったんだ。俺。…これからどうしよう。」
そうポツリと呟いた声も、注意深く聞いてみるとにゃぁにゃぁという鳴き声に聞こえる。
…いや、まてよ？
俺の中で一つの考えが浮かんだ。
…このままずっと猫のままでいたらあのブラックな会社に行かなくてもいいんじゃね？
…そうだよ、もうミスの尻ぬぐいをさせられることもないしこれからは自由気ままに生きていける！
あんな日常とはもうおさらばだ！！
俺はとりあえず今日の寝床を探すために歩き出した。
するとまた体に冷たい何かが落ちてきた。
「つめてっ…ん？雨？」
ポツッ…ポツッ…と落ちてきた雨粒はどんどん激しくなってくる。
「うわっ、やべっ…」
十分もしないうちにザーザー降りになった雨。
そういえば今朝、降水確率90パーセントとか言ってたな…。
「うぅ…さみぃ…くしゅっ…。」
くしゃみをしながらも行く当てもなく歩いているとふいに雨が降ってこなくなった。
不思議に思って周りを見ると、
「うわぁ、この猫ちゃんびしょびしょじゃん。」
上から特徴的な声が聞こえる。
この声、どっかで聞いたことがあるような…。
えーっと、どこだっけ…。
そんなことを考えてると、お腹に手を入れられてグッと持ち上げられる感覚がした。
「へ？」
声の主はおいしょって俺を持ち上げ、俺の顔を覗き込んできた。
「あ〜、お前可愛いなぁ。」
「っ…お前はっ…」
「ふふ、にゃぁにゃぁ鳴いて可愛い〜」
そいつ…伊野尾は朝見たときと同じように微笑んで優しく俺の頭を撫でた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なーの。(プロフ) - お節介かもですが、編集画面の各タイトル横の非表示□をチェックすれば、そのお話は公開されませんよ。書きかけの時はそうしてみてはいかがでしょう？読み手としても、完成したものを読み進めたいです。 (2020年6月20日 18時) (
レス) id: 8c30cb015b (このIDを非表示/違反報告)
姫葵(プロフ) - 、さん» すいません！！忘れてました！！ちゃんとオリジナルフラグ外しておきました！ (2020年5月28日 7時) (レス) id: e59531fe43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：姫葵 | 作成日時：2020年5月27日 21時
