はちみつホットミルクはいかが?【JS】 ページ16
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JS side
「はちみつホットミルクが好きです」
好きとか嫌いとか、そういうのをあまり口にしない弟が、"何が好きか"という幅の広すぎる質問にその答えを持ってくる度、幸せを感じてしまう僕はきっと、どうしようもなく単純なんだろう。
だって、必ずその後に
「シュアヒョンが作ってくれたから」
僕の方を見て、へにゃりと笑ってそんなことを言うんだから仕方がない。
リアリティ番組に参加しないまま、非公開練習生として一番遅くにデビュー組に合流したAに初めは誰もいい顔ができなくて、孤立していたA。
僕も受け入れられなかった側だけど、残った爪の先程の良心が傷んで僕を苦しめた。
だから、夜中にAがいつも勉強をしていることは知っていたから、その誰もいない時間帯を狙ってAの為というよりかは、ほとんど自分の罪悪感を消すために作って渡したのがはちみつホットミルク。
戸惑いながらも口をつけたAは、それを初めて飲んだようで、みるみるうちに花が咲いたように笑うあの顔が今でも忘れられない。
「すごく美味しい。
ありがとうございます」
ただの家庭料理、いや料理の内にも入らないそれ。
ましてや僕の中途半端にした行動にこんなに喜ばれるとは思ってなくて、豆鉄砲を食らった気になった。
同時にお前は何をしてるんだと、頭を鈍器で殴られたような錯覚を覚えた。
どうしようもなく恥ずかしくて、神に顔向けさえできない。
JS「A…
ごめんね」
「…ジス、せんぱい?」
本当にごめん。
まだ幼いその体を、二度と突き放すまいと強く、強く抱き締めた。
JS「はい、どうぞ」
「わあ、はちみつホットミルクだ」
そうして、一口飲んで幸せそうに笑うその顔は月日が経った今でも変わらない。
名前の通りの簡単なレシピだから流石にAも覚えてしまって、自分で淹れることの方が多くなったけど、それでも、僕がこうして作ると「やっぱりヒョンのがいい」って頬をほころばせる。
「甘くて美味しいね」
JS「そうだね。
だけど、ヒョンには少し苦く感じるよ」
「? ヒョン、そんなに甘党だっけ?」
JS「ふふっ どうだろう」
そんな僕の、甘くて苦い過去の話。
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作者名:コーヒーシフォン | 作成日時:2022年12月21日 1時