自責の念. ページ46
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張り詰めた空気の中。
義勇さんが息を呑むのが分かった。
隣を向いて、少し背の高い彼を見上げれば、その目は僅かに見開かれていて。
『鱗滝さんに聞きました。
…詮索するような真似して、ごめんなさい』
「Aが謝る必要はない。
俺が話さなかっただけだ」
冷たい風が足元を吹き抜ける。
頬を伝う涙を拭う私の前で、彼は言葉を選ぶように話し始めた。
「…俺は、守られてばかりだった」
姉にも、友にも─────
もしお姉さんが生きていたら。
今頃、温かい家庭を築きながら幸せに暮らしていた。
もし、錆兎さんが生きていたら。
自分ではなく彼が、水柱として鬼殺隊を率いていた。
何もしていない自分は、他の柱と肩を並べるべきではない。こんな自分に、柱としての資格はない。
そう話しながら、義勇さんは自身の手を強く握りしめる。爪が、食い込んでしまうくらいに。
そんな彼の手を取ったのは、殆ど無意識だった。
彼の口から初めて聞かされる、過去のこと。
不相応だけど… "弱さ" を見せてくれたことが、何だか嬉しくて。
壊れ物を扱うように、その手を優しく包み込む。
硬く、分厚くなった皮膚。
それは、大切な人を亡くした後も、血反吐を吐くような努力を重ねてきた証拠。
守るべきもののために、刀を握り続けてきた証。
『私は、この手に守られてきました』
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作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時