水引の恋【冨岡義勇】 (ページ43)

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鱗滝左近次. ページ43

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焼け付くような暑さも何処へやら。
時折頬を撫でる涼しい風に秋の訪れを感じながら、隣を歩く彼に問いかける。

『義勇さん、鱗滝さんってどんな方ですか？』

「そうだな…優しくて、愛情深い人だ」

─────会ってほしい人がいる。

そう言われたのは昨晩、向かい合うようにして布団に入った時の事だった。
眠りに落ちる直前、ふわふわとした頭で誰に会うのか尋ねれば、彼は自分の師匠だと教えてくれて。

わくわくするような、どきどきするような。
そんな気持ちのまま意識を手放したのは何となく覚えてる。

両側に広がる田んぼの間を歩き続けて。
山に入って数分、辿り着いたのはとある小屋の前。

右手で戸を叩く義勇さんの背中を見つめていると、中から出てきたのは……天狗の面をつけた、白髪のお爺さんだった。

背筋が、ぴんと伸びる。
なんというか…思ってた感じと違う、というか。
とにかく、天狗の面から目が離せない。

…けど。

「義勇、息災だったか」

「はい、お陰様で」

温もりがあって、胸の奥にすとんと落ちるようなその声を聞いて、一気に緊張が解けた気がした。

『はじめまして、香月Aと申します』

「あぁ、話は義勇から聞いている。
疲れただろう、中へ入るといい」

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