人攫い. ページ28
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義勇さんが任務に発って、明日で一週間。
広い屋敷に一人ぼっちというのは…やっぱり退屈で。
必要以上に部屋の掃除をしてみたり、意味も無く屋敷の中を歩き回ってみたり。
それでも有り余る時間をなんとか消費するために、散歩がてら買い物に出ることにしたのだ。
それが、半刻前のこと。
「あら、すっかり暗くなっちゃったわね」
『ほんとだ、いつの間に…』
「ごめんなさいね、引き止めちゃって」
『いえ!いろんなお話聞けて楽しかったです』
人も疎らになった商店街。
その一角、いつもお世話になっている八百屋のおばさんと井戸端会議に夢中になっていれば、辺りはすっかり薄暗くなっていて。
早く帰らないと、真っ暗になってしまう…。
そんな事を考えながらおばさんに挨拶をして、家路につこうとした時。
「あぁ、Aちゃん!」
『はいっ』
「最近ここらで変な噂が流れててね」
『噂、ですか?』
やけに神妙な面持ちのおばさんを見て、つい眉間に力が入ってしまう。そんな私に向かって、おばさんは内緒話をするように口元に手を当てて…。
「夜になると、人攫いが出るっていうんだよ」
『人攫い…』
「何でも若い女の子が狙われてるんだって。
帰り道、くれぐれも気をつけてね」
声を潜めて、そう言った。
そして、店先に置いてあった玉蜀黍を手に取って。
「変な奴がいたらこれでぶっ叩いてやりな」と、買い物鞄にそれを入れてくれたのだった。
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作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時