梅おにぎり. ページ27
.
( 冨岡side )
「もしもーし、冨岡さん?聞こえてますか?」
「聞こえている」
「なら返事の一つぐらいすればどうです?
そんなだからみんなに嫌われるんですよ」
「…俺は嫌われてない」
任務地へ向かう列車に揺られながら。
Aが持たせてくれた握り飯を手に窓の外を見ていれば、正面に座る胡蝶に足を蹴られた。
那谷蜘蛛山に引き続き、何故こうも胡蝶との合同任務が多いのだろう。
「そうですねぇ、少なくともAさんには嫌われていないようですし」
「…何が言いたい」
屋敷を出る時、Aは二人で漬けた梅干しを握り飯に入れたのだと、嬉しそうに話していた。
そんな彼女の顔を思い出しながら食べると…いつも以上に、特別なものに感じられる。
此方に戻って来たら、礼に土産でも買って帰るか…。
「器量好し、お料理も上手。
世の男性が放っておくわけありません」
「あぁ…出来た娘だ、Aは」
「でも、鬼の首を斬る私たちとは違う世界を生きています。何処にでもいるような…普通のお嬢さんです」
いつまでも傍にいると思ったら大間違いですよ、と。
胡蝶はまるで全て見透しているような口ぶりで話す。
「普通のお嬢さん、か」
「出会いなんて色んな所に転がってますからね〜。
誰かに取られる前に、伝えたらどうですか?」
どこか含みのある笑顔でそう話す胡蝶は、再び俺の脛をつま先で小突く。
特に返事をするわけでもなく。
流れる景色に視線を戻せば、真っ白な入道雲が沸き立つように浮かんでいた。
.
484人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時