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敵わない相手. ページ24

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「余程大切にされてるんですね、Aさんのこと」




じじじ、なんて蝉の鳴き声とは正反対の。
鈴を転がすような声が、胸の奥につっかえる。

大切にされている…というか、良くしてもらっているというか。何もかも失った私に "生きる場所" を与えてくれて。何不自由なく過ごさせてもらって。

彼には一生、足を向けて寝られない。
私にとって義勇さんは、そういう人だ。




『ほんと、嬉しい限りです』


「私が思うに…冨岡さん、Aさんのことを一人の女性(・・)として見てるんじゃないでしょうか」


『んっ…コホッ、』




そんな、あまりにも突然すぎるしのぶさんの言葉に飲もうとしたお茶が変な所に入ってしまう。
動揺を隠すために慌てて口に入れた羊羹も、やけに甘ったるく感じた。




『もう、揶揄わないで下さいっ』


「私が思うに、ですよ?」


『…いや、でも』




顔中に、ぶわっと熱が集まる感じがした。
そんな私を見て、しのぶさんはくすくすと面白そうに笑っていて…。




「お二人を見ていると、何だか焦れったいです」


『え?』


「Aさんは嫌いですか?冨岡さんのこと」


『嫌いだなんてそんなっ、むしろ好…』




思わず、というかほぼ反射的に。
口から出そうになったその言葉を、すんでのところで飲み込む。

これじゃあまるで、誘導尋問だ…。

両手で口を抑えながら、恐る恐るしのぶさんを見てみれば…いつもと変わらない、柔らかい笑顔を浮かべていた。




その笑顔も、今は少し意地の悪いものに感じてしまう。
やっぱり…しのぶさんには敵わない。




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自覚.→←本当の貴方.



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作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時

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