鬼のいない世界. ページ18
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結局、蝶屋敷を出る直前まで善逸くんからのお誘いを受け続けて。帰ってきた頃にはどっと疲れが溜まっていた。
上手く断る術を考えないと…なんて思いながら、少し薄暗くなった台所で、庭で獲れた梅の
竹ざるの上には程よく熟した梅が沢山積まれていて。その隣では寛三郎が体を丸めて眠っていた。
そんな姿を微笑ましく見ていると、突然背後から声をかけられて。
「…梅、今年は何にするんだ」
『わ!…吃驚した、』
「すまない。楽しそうにしていたから、邪魔をしてはいけないと」
ぱっと振り向けば、どこか嬉しそうな表情の義勇さんが包みを片手に立っていた。
今日は夜の任務がない代わりに、街へ聞き込みに行っていたそうで…。
隊服を着ていない姿は少し新鮮だった。
『今年は梅干しを作ろうと思って。
寛三郎も収穫を手伝ってくれたんですよ』
「そうか…寛三郎、Aに懐いているからな」
そう言いながら、義勇さんは寛三郎の体をそっと撫でる。
『義勇さん、先にお風呂入られますか?
これが終わったらすぐご飯の用意しますから』
「いや、俺も手伝おう。
…何をすればいいだろうか」
『それじゃあ、一緒に蔕を取ってもらってもいいですか?竹串を使うと簡単に取れるので』
「承知した」
二人肩を並べて、他愛もない話をしながら。
静かに過ぎていく時間はとても温かかった。
もし、この世に鬼というものが存在しなかったら…。
こんな時間が当たり前になるんじゃないかと、錯覚してしまうくらい。
『ところで義勇さん、その包みは?』
「あぁ、柏餅を買ってきた」
『ほんとですか?
嬉しい、柏餅大好きですっ』
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作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時