優しい子. ページ11
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視界が滲んで。
堪え切れなくなった涙が、頬を伝う。
抱き着くその子の背中に手を伸ばすと、ぽんぽん、と優しく頭を撫でてくれた。
その手までも、妹の小さな手と重なって…。
温もりを閉じ込めるように、二度と失わないように。縋り付くようにしながら、その体を抱きしめる。
『怖かったよね……ごめんね、守ってあげられなくて…』
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…暫くして、少し落ち着きを取り戻した頃。
見ず知らずの子にとんでもない事をしてしまったと、慌てて体を離したと同時に、部屋の扉が静かに開いて。
「禰豆子、戻って来たぞ」
「むっ」
現れたのは、珍しい耳飾りを付けた男の子だった。
"禰豆子" と呼ばれた女の子は、ぱたぱたとその子の元へ駆け寄る。
そして、部屋の真ん中で涙を流す私に気付いた男の子は、ぎょっとした表情になって。
「ああああの!すみません!
うちの禰豆子が何かしましたか!!」
『ううん、違うの。
…ごめんなさい、私が勝手に』
そう言いながら、慌てて袖口で涙を拭う私のところに再び女の子がやって来て。
先程のように、ぎゅっと抱き締められる。
"泣かないで"
そう、慰めてくれるように…。
「むー」
『…ありがとう、優しいのね』
「禰豆子…」
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作者名:Hana :*・ | 作成日時:2020年7月9日 17時