【HQ】婿に来てええですか -2-【宮治】 (ページ15)

今日:9 hit、昨日:74 hit、合計:88,496 hit

63.空腹ページ15

･

中学生が歩くには、

補導されてもおかしない時間帯。

この前まではめちゃくちゃ気にしてたんに、

今の私は夜道のド真ん中をズンズン歩き進んどる。

__________バンッ、！、！！

『ただいま！！！』

そんで、家玄関ではなく、婆ちゃんがいるであろう

店側の引き戸を勢いよく開けた。

婆「やっと帰ってきたわぁ～」

父「もっと早く帰ってこいや！ほんで静かに入ってこいッ」

『すまん！』

中にいた婆ちゃんとオトンはもちろんの事、

常連の客さん達も居って、

客「Aちゃんべっぴんやから連れ去られたんちゃうかって冷や冷やしたわぁ、！」

客2「可愛い娘もつ父親は大変やなぁー！！」

私が帰ってこんからプチ騒ぎになってたらしい。

『心配かけてすんませんっ、！』

ぺこりと頭を下げてお詫びする。

それと同時にギュルギュルと変な音を立てる私のお腹。

『せや！！婆ちゃんっ！！』

今私は、腹が空いてそれしか頭にない状態やねん。

父「慌ただしい奴やなぁ」

婆「どうしたんや？そんな急いで」

『めっちゃ腹減ってんねん！！ご飯食べるっ！！！
なんかつくって！！』

おとんと婆ちゃんは私の発言に驚いたんか、

目を見開いてはお互いを見合っていた。

婆「はいっ。たーんとお食べっ！」

『いただきます！！』

飲んだくれた常連客さん達を横に、

私の前に出されたお盆には、

見るからに体に良さそうな和食の面々。

ほうれん草のお浸しに、味噌味の煮魚。

たくあんときゅうりは婆ちゃんが毎回漬けとるもので。

熱々の白米を口いっぱいに放り込んで、

じゃがいもと玉ねぎの入った味噌汁は、

夜風に当たってきた私の体を一気に温かくしてくれた。

『はぁっ、ご馳走さまっ！！』

心も腹も、一気に満たされて、

頭の中で考えるんは今まで気にしてなかった事ばっかやった。

『婆ちゃん、このお浸しどうやって作るん？』

婆「え？」

『私も作れるようになりたい！！今度教えて！』

ホンマにこれがキッカケやってん。

父「お前、料理興味あるんか？」

『おんっ。美味しいもんいっぱい作れるようなって
頑張ってる人に食べてもらうねんっ。
そうすればみんな元気なってくれるやろ？』

バレーを辞めて、美味い飯を提供する。

こん時にはもう、私に迷いはなかった。