【HQ】婿に来てええですか -2-【宮治】 (ページ14)

今日:50 hit、昨日:52 hit、合計:88,463 hit

62.最初のひと口ページ14

･

男の子に渡された手土産を持って家路を歩く。

『食ったら腹減る、か…』

よう分からんけど、力がうまく抜けた。

これ以外にも袋持っとって、チラッと中身見えたけど

他にも色々弁当とか買ってたみたいやった。

暫く歩いてから振り向いたら、

兄弟っぽい、背丈の同じ子と話しとって。

その後2人で直ぐに帰ろうとしてたから、

私の事待ってたんやろか…

どこの誰かも知らんのに…

おにぎり譲ってくれたお礼って言っても、

親切にも程があるわ。

『変な子やな、』

値引きされて鮮度の落ちたであろうお握り。

こんなん毎日どこにでもありふれた物やのに、

『人から貰うと愛着湧くんよなぁ、』

自分で買ってたらこんな気持ちにはなってへんかった思う。

"「無理やったらまた気向いた時食えばええやろ？」"

彼がポロッと口にした言葉が

ずっと頭の中で永遠ループする。

"「飯はこっちが求めればいつでも美味いもんやで」"

…せやんなっ、

一口でも食べてみればええんよなっ。

冷えた手で袋からお握りを取り出す。

食べ物を手に取るのだって1週間ぶりくらいやろか。

海苔を巻いて小さめに一口、

口の中の水分を全部持ってかれて、

噛むのに必死になってたらどんどん味が濃くなって

『……、ぁかん、ッ』

気が付いたら感情よりも先に涙が出ていた。

うまく飲み込めんくて時間掛かったけど

おにぎりはちゃんと、美味かった。

悲しいことがあっても飯は美味しいと思える。

そんな気力を私はまだ持っていたらしい。

そんでそれをこのおにぎりが教えてくれた。

その瞬間から急にお腹が空いてきて、

その場にしゃがみ込んでペロッと残りを平らげた。

腹にものが入るとあんなに重かった体が少し軽くなる。

家に帰る足取りは意外にも軽かった。