後輩、平野くん ~Sho.Hirano~

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＊紫耀side







岸先輩のこと、好きだったんじゃなかったのかな？







なんで断ったんやろ･･







聞こうか迷っていたら







『それよりも早く脱ぎな？冷えるでしょ』







話をサラッと流されてしまった。







俺としてはそこをもっと深く聞きたいんだけど･･







紫「好きな人、いないんですか？」






『んーどうだろね』







ちゃんとした返しは全然してくんない。







いるか、いないか、ハッキリ言ってくれればいいのに濁されるのが一番モヤモヤする。







白シャツのボタンを外しながら、A先輩を目で追う。







目の前にいるのに･･







手に入りそうなのに、、、








届きそうで届かない。







触れたいのに、









触れられない。








この気持ちをどこにぶつけたらいいのか･･









ぶつけたとしても、何がどう変わるのか、もはや自分でも分からなくなっていた。









『はい！』








綺麗に畳まれた廉のスウェットを俺の目の前に差し出してきたA先輩。









でも、なかなかそれを受け取らない俺に、A先輩は不審に思ったのか･･









『･･平野くん、どうしたの？』








俺の顔を覗くように近づいた。









紫「いや、なにも･･」








スウェットを受け取ろうとしたのだが、









『やっぱり熱あるんじゃない？』









そんなのお構いなし、。








A先輩の細くて綺麗な手が自分の額に伸びてきた。








こういうの平気でしちゃうから･･優しさって時々、罪になる。そう思った。









その気はない･･









後輩だから、








廉の友達だから、、








だから、こんなに優しくしてくる。









構ってくれる。









そうは分かっていても、やっぱり感情は溺れる。









理性は完璧に保てない。









いつの間にか、思考回路はとまったまま









気が付けばA先輩を強く抱きしめていた。









『平野、くん、？』









何回か抱きついた事はあったけど、全部ノリで流されていた。








こんなに強く、A先輩を包むように抱きしめたのは初めてだった。








『ッねぇッ、苦し、いッ』









身長の割に意外と華奢なA先輩。









いっそのこと、全部壊れてしまえばいいのに･･









本気を分かってもらえるならそれはもう本望かもしれない。







そう思ってしまった。

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