12_私服 ページ14
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そして訪れた食事の日、当日。
待ち合わせ場所へ向かうと、彼は常に早いから先に待っていて。
『お待たせしました』
「…んえ〜」
私の格好を見て、ホークス先輩は口をへの字に曲げた。ご機嫌ななめである。
「ねぇなんで真っ黒なの？」
先輩が指摘したのは私が着てきた私服の事だろう。
先輩がほぼ毎日ヒーロースーツを着るように、私だってスーツを着る事の方が多い。
『黒しか持ってません』
私服にこだわる程の余裕も趣味もないのだ。
そこに文句を言われても、だ。じゃぁ誘うなとなる。
「…ワンピースとか期待してたんだけど」
黒スキニーを履いてきた事が不満なのか、「普段の真っ黒スーツと変わんないじゃん」とブツブツ文句を言い流す。
『そんな期待どこから来るんですか？』
「だってデートだよ？気合い入るじゃん」
この人は、数日前の私との会話が記憶にないのだろうか。
『だからデートじゃないですってば！！それにイザと言う時の為、動きやすさ重視です』
「うわぁまじめー」
明らかにつまらなそうだと分かるほどの棒読み感。
私はあなたの彼女じゃないっつーの。
そのままブツブツダラダラと、言い返しを続けながら先輩の後ろをついて行く。
周りからの視線が酷い…
「キャー！！」
「ホークス！！」
「好きーっ！！」
「手振って〜！」
特に若い女性から。
No.2ヒーローが私服姿で街を普通に歩いてるんだから、そりゃ注目するに決まっていて。
その黄色い声援に嫌な顔ひとつせず、なんならノリノリで答えてく先輩。…満面の笑みで手を振っていた。
それに連なるように連鎖してキャーキャー聞こえる。
『相変わらずアイドルみたいですね』
それに……受け答えとか流し方とか、諸々慣れている。
ヒーローよりアイドルの方が向いてるんじゃないの？この人。
「なになにー？嫉妬してくれたの？」
『なんでそうなるんですか』
ヘラヘラ笑っている先輩が「素直になっていいんだよ」なんて言うけど別に強がってもない。
「ねぇねぇ隣歩いてる人誰かな？」
「彼女ー？！」
どこからか聞こえてきた噂話に先輩は嬉しそうに人差し指を口元でたてる。
「内緒〜！！」
『ちょっとッ誤解招くような答え方しないで下さいよッ』
「なんで〜いいじゃんっ俺誤解されたいっ」
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作者名：muhe
| 作成日時：2022年12月2日 20時
