交わらぬ鐘の音 ~Yuta.Kishi~

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＊廉サイド






いつから君にそんな顔をさせるようになったんだろう。






親公認で付き合っている。






それで気持ちが晴れたのはほんの一瞬だけだった。







Aの瞳にちゃんと俺が写っているのか、何回も確かめては簡単に傷ついて、。







Aが俺に向けた愛は純粋じゃない事も、最初から全部分かりきってたのに、。







俺がAを疑い続けるのは決して信用してないからじゃない。







俺が自分に自信がないから。







愛された事がない俺は、その安らぎをAから必死に貰おうとしている。






ここまで来ると自分でも無様にも思えてくる。








君とキスした時の唇の感覚、





苦しくなるとギュッと俺の服を握る仕草、






全部が愛おしい、。








肌が触れ合うたびに必ずもっと欲しくなってまう俺は、きっと知らなくていい快感を知りすぎたんだろう。







初恋は実らせない方がいい。







あの時にちゃんと諦めてれば...Aは幸せやった？







好きな人には幸せになって欲しい。






それは強い奴が出来ること、。







岸くんが、自分から身を引いたのは自分を後回しにしたから。







今の俺は好きな人に幸せになって欲しいなんて1ミリも思えていない。






俺を幸せにして欲しい、。







そんなめちゃくちゃな願望でAを振り回していた。







だけどAのいない人生なんて、生きてく希望を見いだせないんだ。







俺は一人じゃ何も出来ないし、弱虫なんだ。








昨日のことがずっと気残りで、Aは俺の顔色ばかり伺ってくる。







Aが嘘つくようにも思えないけど、今の俺には広い視野で考えることなんて皆無で。







今朝もAの事をまともに見れないまま、会社に出勤していた。






社員達に礼儀正しく挨拶されてもまともな返事ができない。







仕事じゃ父親の代わりに頼られる事が多くなった、。







「B社の方が本社にお目に掛かるとお父様からご連絡がありました」







その分失敗できないプレッシャーに何度も壊れそうで、







そんな俺を慰めてくれるのはやっぱりAしかいなくて。








だから、頭の中はいつもAでいっぱいで、






苦しいけど、でもAの事で必死な自分もそう嫌いちゃうくて。







だから俺は、無理なんやと思う。







Aを解放してあげられる方法なんて、数がしれてる。

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