4-34.ぶりっ子ちゃんの生還 ページ35
「もえたーん！ 洋先ぱーい！」
「あ！ 百恵ちゃんが目を覚ましたぞぉ！」
蛍光灯の光を背に、あたふたオロオロするもりりん先輩と夏目先輩の姿。化学方程式が消え残るスライド式の黒板。……現実だった。
「もえたん、ケガはない？」
「は、はぁい特には……。あの、一体何があったんですかぁ……？」
半身を起こし問いかけたが、二人は要領の得ない顔を見合わせて唸っている。もりりん先輩が自信なさげに経緯を辿った。
「それが分かんないんだよね……。洋先輩をキャッチしようとしたらいきなりもえたんが弾丸みたいに突っ込んできて、ヤバイ！ って目を瞑ったら……何故か洋先輩がもえたんの下敷きになってるっていう……」
その言葉にハッとして恐る恐る目を落とせば――夢野先輩がわたしの下で潰れているではないか！
「すっすみませぇんっ！ ご無事ですか！？」
と慌てて退いたところ、夢野先輩は何事もなかったようにむくりと起き上がり、平然とした顔でわたしに尋ねた。
「見えた？」
何が、と問い返す言葉を飲み込んだ。きっとさっきの不可思議な夢の事を言っている。こくりとうなずくと、前髪で隠れていない方の目を興味深そうに開き、
「ぼくも」
とちょっと親しげに自分を指差した。
「ん？ 何が何が？ 何を見たんだい？」
「言わない」
「あ〜二人だけの秘密か、なら仕方ない！」
「納得が早い」
「ねぐらーん、もう大丈夫だよ。もえたんも洋先輩も平気だよ」
もりりん先輩が黒板の隅っこでうずくまる蘭ちゃんに声をかけた。そろそろと顔を上げ「よかった……」と声にならない声で脱力していた。
「いや〜事故かと思って焦ったよ。それにしても、こんな時でも凛子さんは全く動じなくてすごいなあ〜」
「――いいや違います、この子気絶してます！」
「えーーー！！」
平常通り半目の無表情で佇立しているので気づかなかった。確かにわたしたちが大騒ぎしても泉先輩は直立不動のまま何の反応も示さない。
数秒置いてから、微かに眉を動かし瞬きを繰り返した。
「……気絶してないわ」
「凛子ってば、びっくりなことが重なったから動揺したんだね」
「全然、動揺なんてしてないわ。そんなことより、次私がいくけど」
わたしと蘭ちゃんに目顔で確認を取ってから緑のブロックを引き抜き、
『生麦生米生卵 を完璧に言う』
というお題を見せつつ、極めて冷静沈着な態度で言い放った。
「にゃまむぎ」
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
