4-3.ぶりっ子ちゃんの口上 ページ4
自己紹介のバトンがわたしたちに移る。それを受け取ろうとした瞬間、静電気が走った。
先生とクラスメイトの前で激痛ぶりっ子を晒して教室を南極大陸にしてみせた、一学期の自己紹介。北風のように眼前に横切り、脇を締めて身震いしたくなる。黒歴史。わたしはまた黒歴史を重ねてしまうのか。
「わ、私は塒 蘭といいます……。夏休みに隣町から引っ越して、この
もたつくわたしの代わりに、蘭ちゃんが先に名乗ってくれた。
「え、転校生さんだったの！？ 前はどの学校にいたの？」
「えっと……
「へ〜、葉調って確かここより賢いとこだよね！ 私でよければ、もし何か不安なことがあったら頼ってね！」
「あ、ありがとうございます……」
はにかみながらも俯く蘭ちゃん。もじもじと細い指で爪を撫でる仕草は、もりりん先輩への照れだけじゃなく、無表情を貫く泉先輩の眼光から逃げているようだった。
ついにわたしの番だ。蘭ちゃんがくれた猶予のおかげで、ちょっとした覚悟が出来た。軽く一呼吸置き、居住まいを正してから、しっかりと先輩を捉えた。
「初めまして。蘭ちゃんと同じ一年四組の、朝戸衣 百恵と申します。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
と、恭しく頭を下げる。先輩は驚いているだろう。茶髪のツインテールにリボン、カチューシャを決め込んだいかにもなやつが、真面目な挨拶をしてきたのだから。
でも、だからこそ。そんないかにもなやつが、この程度で終わるはずがない。
「なんちゃって〜〜〜っ♪」
イスを蹴倒さんばかりに立ち上がる。
「初めまして〜！ 桃園の天使こと、朝戸衣 百恵でぇす♡ お気軽に『もえたん』って呼んでくださいねっ♡」
巻いたツインテールをふりふり揺らし、とびきりの「ももえがお」をプレゼント。
「得意技は〜『ももえーる』です☆ もえたんって、ヴィーナスも腰を抜かす程の美少女なのでぇ〜、ふれっふれって応援するだけでみんな元気になっちゃうんですよぉ♡ ここで会ったのも何かの縁、まばたきせずにご照覧あれ☆」
腰に手を当て、渾身の決めポーズ。
「ももえーるっ♪ キラッ☆」
……眉ひとつ動かさない泉先輩を前に、ももえがおが引きつる。
けれど、今のわたしに悔いはない。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
