4-17.ぶりっ子ちゃんの補佐 ページ18
「たのもー!」
ドアが開き、もりりん先輩がやって来た。後ろに蘭ちゃんも続いた。
考えるより先に、わたしは物凄い勢いで蘭ちゃんに飛びついた。
「わっ……。ど、どうしたの百恵ちゃん……?」
突撃してきたわたしを受け止めながらも、困惑している。それに構わずわたしは腕に抱きつき、肩に頬をくっつけた。
「再会のハグ♡」
別れたのは少しの間だけなのに大げさだ。けれど、いてもたってもいられなかった。あの時孤独が顔を出してきたのは、自分に似たこの温もりに飢えていたからだと思う。
もりりん先輩が横でじっと見守っている。ちょっと恥ずかしくなってきたので、これはぶりっ子お得意のスキンシップだと自分に言い訳して、絡ませた腕を解いた。
あ、と蘭ちゃんが声を上げた。振り返ると、いつの間にか夏目先輩がすぐそこに立っていた。陰りはもうなかった。わたしの奇行が終わるまでずっと待っていたのか、うずうずしている。
「塒 蘭ちゃんだよねっ! 転校生さんの!」
「あ……は……はい……っ」
「初めまして、夏目 海馬です! この学校はもう慣れた? 不安なことがあれば、何でも言ってね! こう見えて生徒会長なので!」
俯きがちに蘭ちゃんは口を動かしているが、聞き取れなかった。夏目先輩の勢いに押されに押されて縮こまっている。
顔を覗き込もうとしたのか、夏目先輩が一歩近づく。すると蘭ちゃんは一歩距離をとった。夏目先輩はまた一歩近づく。蘭ちゃんはまた一歩下がる。進んだ分だけ下がってプラマイゼロにする。しまいにはわたしの背中に逃げ込んでしまった。
「えっ、あっ……。そ、そんなぁああ」
横の実験台に倒れ伏す夏目先輩。抜け殻みたいだ。
「もー海馬先輩! いきなりグイグイ行っちゃだめですよ〜」
見かねたもりりん先輩が入ってきて、夏目先輩を諌めつつも慰めた。わたしも蘭ちゃんを励まし、仲立ちに協力した。
「あ、あの、夏目先輩の放送、いつも楽しく聞かせてもらってます……」
わたしの背中を離れて一歩踏み出す蘭ちゃん。それを見るなり、夏目先輩は生き返った。
「え、いつも聞いてくれてるの!? ありがとう! 嬉しいなぁーっ!」
無暗に近づいたらまた怖がらせてしまうと思ったのか、夏目先輩はその場で小躍りして喜びを表現した。りうむちゃんの海藻ダンスを彷彿とさせるその動きに、蘭ちゃんは微笑みながら控えめに手拍子を始める。
一件落着か、ともりりん先輩と安堵し合った。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね!私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました!ありがとうございます!これからも更新頑張って下さい!! (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました!!皆大好きです!!次の更新楽しみにしてます!! (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます!!お楽しみいただけてとっても嬉しいです!これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます!偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2020年3月30日 18時