4-13.ぶりっ子ちゃんの不発 ページ14
「ほんとに悪いね、こんなにもらっちゃって……」
半分くらい減ったわたしのお弁当を心苦しそうに見つめている。
まだわたしには、『隠し玉』がある。
「ほわわ？ お弁当の妖精さんが願いを叶えてくれたお礼に贈り物を用意したそうですぅ！ どこかな〜……あっ！」
自分の鞄をわざとたどたどしく漁り、愛食している袋詰めのごまスティックのビスケットを取り出してみせた。
「仲良く食べてね、だそうです♪」
ごまスティックを魔法のステッキみたく振るわたしを見て、夏目先輩はふっと懐古的な笑みを零した。
「優しい妖精さんだね」
〜〜〜〜〜
いつもより少ないお昼ご飯を食べながら雑談した。基本夏目先輩が話題を出してわたしが相槌を打つ形だが、わたしが話す時は心底楽しそうに聞いてくれた。
話によると、娯楽同好会のもうひとりの三年の男子は夏目先輩の友達らしい。わたしも蘭ちゃんもまだ会っていないことを知ると、きょろきょろしてから「心臓に悪いけど面白いやつだよ」と声を潜めた。それ以上は語ろうとしなかった。
しばらくして、昼食を終えた。
「実は百恵ちゃんにお願いがあるんだけど……」
おずおずと言う。やや躊躇ってから、いきなり身を乗り出してきた。
「ももえーるしてください！！」
たまげるわたしに興奮気味で迫る。
「もりりんと凛子さんからいつも話を聞いてるよ！ ももえーるがすごいって！ だからずっと気になっててさ！」
まさか、ももえーるを相手から求められる日が来るなんて。
「見たいなー！ 見たいなぁ〜〜」
もえもえおねだり顔負けのおねだり光線。
「よぉ〜し、覚悟しててくださいね♡」
「やったー！」
承ったからには半端なももえーるは出来ない。応援文句を探るべく、夏目先輩を注視した。
意志の強い眉と眼光。常に自分の道は自分で決め、自分の足で歩いてきた背景がそこにある。瞳は真っ昼間の海のように、わたしへの期待で煌めいている。
けれど、一瞬だけ見えた。煌めきに交われない僅かな陰りが。わたしに見つけられると、すぐさま隠れた。と思えばまた現れた。海面に浮かび上がろうか、そのまま深海に沈もうか、どっちつかずで漂っている。その間にもじわじわと煌めきを侵食していく。
この曖昧な陰りの正体が掴めないなら、最適な言葉を紡げない。どう足掻いても、夏目先輩が本当に望むももえーるにならない。
これでは、ももえーるが出来ない。
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
