4-12.ぶりっ子ちゃんの返礼 ページ13
何をするつもりかと夏目先輩に注目した。すると、ちゃららららら〜とマジックに使うようなメロディーを歌い始め、さっきのA3の提出期限切れのプリントを取り出して表裏をわたしにひらひら見せた。そうしてそれを両方空っぽのお弁当箱の上に覆い被せ、よく見ててというようにわたしに目で合図した。
そうだ、何も入っていないお弁当なんてありえない。今からマジックでおかずとご飯を出してわたしをアッと驚かせてくれるのだ、夏目先輩は。
「3、2、1、ハイッ！！」
テーブルクロス引きみたいに被せたプリントを勢いよく引き抜くと……。
空っぽのままだった。
種も仕掛けも白米もおかずもないイリュージョンだった……。
それでもめげずに最後の光に縋るように財布を出してこじ開けるが、その希望が砕かれたと同時にいよいよ現実を受け止めたようで、さしもの夏目先輩でも笑顔を引っ込めて悲しそうに眉を震わせ、
「おれのお昼ご飯〜〜〜〜！！」
とプリントを放り出しワッと泣き伏した。人のことを言えないが、夏目先輩のお母さんは少しうっかりさんのようだ。
不謹慎かもしれないが、チャンスだと思った。今こそ縮みきった「もえたん」を解放する時だと。
「はわわ〜！ 妖精さん落ち着いてえ！」
自分のお弁当箱をガタガタ揺らし始める頭のおかしい後輩に気づき、夏目先輩は目を上げた。
「もえたんのお弁当の妖精さんがあ、夏目先輩のその素敵な箱さんにどうしてもお邪魔したくってうずうずしてるんですぅ〜！ もし良かったらぁ、お出迎えしてもらえませんかぁ……？」
ぶりっ子語の意味が伝わったのか、一瞬目を輝かせる夏目先輩だが。
「……ううん、平気だよ！ じ、実はね、ちょうど昼食も抜きたい気分だったんだよね、あはは」
やっぱり却って気を遣わせてしまうか。でも迷惑じゃなければ諦めたくない。
「あー大変っ！ お弁当の妖精さんたちがプンプンしちゃってぇ、要求を呑まなければ二人まとめて呪ってやるって言ってますぅ！」
「な……なんだって！？」
「どうか、妖精さんの怒りを鎮めてくださぁい……！」
わたしのお弁当と、自分のお弁当箱を真剣な顔で見比べる夏目先輩。やがて数秒の思案の後、申し訳無さそうに二段弁当の片方をわたしの前に寄せると、机に両手をついて頭を垂れた。
「おいでませ、妖精さん……！！」
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やま(プロフ) - 更新待ってます!! (2021年9月19日 18時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
柚子 - もえたん可愛いですね！私自身、ぶりっ子の事が嫌いまでとはいかないけど少し苦手意識があったんですが、この作品を読んでぶりっ子への意識が変わりました！ありがとうございます！これからも更新頑張って下さい！！ (2021年8月24日 1時) (レス) id: 12dcb448c9 (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 面白くて、『一周回ってぶりっ子を許せる小説』から一気見しちゃいました！！皆大好きです！！次の更新楽しみにしてます！！ (2021年7月19日 19時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - こんな一生懸命で可愛いぶりっ子なんて許す以外に方法あります…?! (2021年7月17日 15時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - リカさんさん» ありがとうございます！！お楽しみいただけてとっても嬉しいです！これからもぶりっ子の可能性を発掘していきます！偏見や先入観だけで片付けるには、あまりにももったいない逸材なので……！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2020年3月30日 18時
