3-37.ぶりっ子ちゃんの錬磨 ページ38
わたしたちは、田山君がくれた二週間を大切にして過ごした。
学校の休み時間。FINE。一緒にいる時も、そうでない時も、お互いの進捗状況を逐一確認しあった。
そうして、苦労を束ねたわたしたちのプレゼンが――ついに形となった。
しかし、これで一息をつくわけにはいかない。どんなに内容が良くても、発表の仕方が拙ければ元も子もない。つまるところ、わたしたちには人一倍の練習が必要だった。
放課後の誰もいない教室。例の無人トイレ。人目のない場所で密かに練習を重ねた。
わたしはずっと蘭ちゃんのことが心配だった。練習を始めた途端、顔色を悪くし、ただでさえ控えめな声が消え入りそうになってしまうのだ。代わりにわたしが多めに喋ろうと提案したが、蘭ちゃんは頑なにかぶりを振った。半々がいいと。頑張らせてほしいと懇願までしてきた。それをわたしは全力で尊重すべく、終わる度に申し訳なさそうに八の字眉を曇らせる彼女をひたすら励ました。そしてその裏で、ぶりっ子の口調でありながらもプレゼンにふさわしい喋り方を追究した。
練習の甲斐あって、少しずつ蘭ちゃんの声に自信が宿ってきた。頼りきりだった原稿から目を上げて、前を見て話せるようにもなれた。そんな彼女の努力を蔑ろにしないように、わたしも必死に原稿を覚え、家に帰ってからもひとりで練習した。
やがて。いよいよ。
長いようであっという間だった二週間が、終わりを迎える。
「明日、だね……」
誰もいない教室の真ん中でリハーサルを終え、蘭ちゃんがぼそりとつぶやく。時計を見れば、下校時刻が差し迫っていた。
「うん……もえたん、ドキドキしちゃうな〜♡」
自分の席に戻り、原稿をファイルに綴じて鞄に直す。蘭ちゃんも同じく隣で帰り支度をしていたが、急にぴたりと動作を止めた。
うつむいている。
「……怖い。明日が来るのが、怖い。失敗したらどうしようって。迷惑かけたらどうしようって。悪い未来ばっかり想像しちゃう」
不思議だ。不安を口にしているのに、そこにそれが感じられない。まるで過去の自分を眺めているような声色だった。
覆い被さった黒髪を払って、顔を上げた。
思わずわたしは、目を見開いた。
「でも、もう大丈夫。百恵ちゃんがいるから……怖くても、頑張ろうって思えるの」
眼鏡の向こう。遠慮がちだった蘭ちゃんの薄い瞳が。
今までに見たことのない、あたたかく強い光を放っていた。
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
