3-12.ぶりっ子ちゃんのお誘い ページ13
「チャンスは今だけ！ さあどうぞ♡」
二本のくじを握る拳を、半ば強引に蘭ちゃんの胸元までグイグイ近づける。彼女は後ずさるようにして椅子の背もたれに背中がくっつくと、観念したようにくじをしっかりと認めてから、持ち主を見上げた。わたしは怪しいものじゃないですよ、タネも仕掛けもありませんよと、見た人を安心させる効果を持つ(と思う)ももえがおを輝かせた。
「じゃ、じゃあ……」
ババ抜きの最終決戦のように、蘭ちゃんの指がくじの上でひどく惑う。やがて桃色の方に決めたみたいなので、拳を緩めると、遠慮がちにゆっくり抜いた。
「えっと……『もえもえ等』……？」
「おめでとうございまぁーすっ♡ あなたは本当にラッキーガールですねっ♡ もえたん感激ぃっ」
くるくる回りながら軽やかなスキップで蘭ちゃんの席を一周し、また真正面で立ち止まり、
「もえもえ等を引くと〜、なな、なんとぉっ！ もう一回引けちゃいまーすっ♡」
残った水色のくじを、わたしはにこやかに差し出した。
八文字を極めた眉は、選択肢がひとつしかない恐怖と不安がない交ぜになったかのような曇りっぷり。けれど腹を括ったのか、捨て身の覚悟とばかりに水色を引っこ抜いた。
くじの文言を、恐る恐る口にする。
「……すーぱー☆……もえもえ等……？」
「おめでとうございまぁぁあすっ！！」
思わず出てしまった大声に、最前列の席の志真崎さんが、「今日のもえたんエライ絶好調だな」と友達のゆーちゃんさんにボヤいていたのが耳に入る。わたしはなんて馬鹿なことをしているのだろうと急に小っ恥ずかしくなったが、この程度ではめげない。
「すーぱー☆もえもえ等を引くとぉ〜、なんと！ なんとビックリ！」
ももえーるのポーズを決めて、わたしは言う。
「もえたんの桃園にご招待〜〜♡」
くじを握りしめたまま、呆気に取られる蘭ちゃん。それもそうだ。ちゃんとした言葉で説明しなければ。
「……えっと〜、プレゼンの話し合いもかねて、あの〜……その……」
不思議だ。ぶりっ子語を普通の言葉に翻訳すると、それを言うのが無性に照れくさくなる。それを誤魔化すように折り目正しく気をつけをして、笑ってしまいそうなくらい真面目くさったトーンでそれを口にした。
「……もえたんのお家に、遊びに来ませんか」
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
