3-16.ぶりっ子ちゃんの想起 ページ17
わたしは面食らった。
まさかそんな顔をしてくれるとは思ってなくて、「ありがとう」も「そんなことないよ」も咄嗟に出てこなくて、
「の、飲み物っ！ お菓子も、すぐに持ってくるねっ♪ その辺にてきとーにくつろいでてねっ♪」
と頭を冷やすべく、逃げるように自室を飛び出した。
ハートマークでも付けながらその言葉を素直に受け取ればいいのに。それがぶりっ子の定石だというのに。面と向かって自分自身を肯定されると、どうしてこうも体がソワソワしてしまうのだろう。
〜〜〜〜〜
一階のキッチンの冷蔵庫を開け、ふたつのコップに麦茶を注ぐ。氷のぶつかるカランッという心地良い音を聞くと、幾分か落ち着けた。
この日のために調達してきた大量のおかしを並べる。味の好みを把握していないので、とりあえず無難なクッキーやスナック菓子を揃えた。
そういえば、とお菓子をお盆に盛り付けながら思い出す。そういえば、昨日の短縮授業の後、お菓子を買うため学校の近くのコンビニに寄った時。うちの学校の制服を来た男子がお弁当コーナーに立っていた。わたしは後頭部に電撃が掠めたような感覚がした。だって、その男子、明らかに見たことがある。記憶を遡ると、ある光景と重なった。
蘭ちゃんに初めて出会った日。二学期の始業式。そこで行われた表彰授与。確か水泳部の、三年の女子にやたらキャーキャー言われていた男子二人組の、二位で悔しそうにしていた方の男子。今まさにお弁当に悩むその後ろ姿と、二位の賞状を受け取る後ろ姿が一致したのだ。
けれどわたしはそれだけでは確証が持てなくて、陳列棚の影からこっそり横顔を覗き見た。わたしとは住む世界が違う、遠い存在だと瞬時に悟れるまでに整った顔。そのオーラ。そして、今日の昼食を品定めする真剣な眼差し。そうだ、この眼差し――隣に立つ一位の男子に一瞬だけ突き刺した、嫉妬と悔恨の眼差し。間違いない、どちらも同じ人物が発したものだ。
やがて徐々に覗き見に遠慮がなくなり、さらに身を乗り出そうとした、その時。
突然彼がこっちを向いた！
わたしは即座に隠れた。多分バレていない。バクバクした心臓を抑えつつ、そのままお菓子コーナーに逃げ込んだ。
今になってみると、あんな大胆な覗き見をしたのは、自分の中に「もしかして」があったからだと思う。
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やま(プロフ) - 面白いです、笑っちゃいました。 (2021年9月19日 13時) (
レス) id: 0eb68c7075 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - あ、真白と同一人物です！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 思わず笑っちゃいました！しかも、なんか余計にクラスの人に�猜僂陛朖瓩辰道廚錣譴修Δ覆海箸鬚錣兇錣供帖帖帖帖�この小説凄く面白いです！ (2021年7月25日 17時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ぶりっ子についてプレゼンする人なんてそうそういないですよね（苦笑） (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - Rukia (ゆっくりゆる)さん» ありがとうございます！！一人一人の登場人物をこんなに丁寧に見てくださって本当に嬉しいです！（いつか名前も覚えていただければ大変恐縮です！）りうむちゃんのことも好きになってもらえて嬉しいです、ぜひ推してあげてください！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆の字 | 作成日時：2019年12月7日 15時
