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1-9.ぶりっ子ちゃんの本領 ページ10




 鳴り響くチャイムは、わたしの心臓を騒がせるシグナルだ。

「昨日言ったとおり、今日のロングホームルームは出席番号順で自己紹介をします。みんな言うこと考えて来たかー?」

 「うわー」とか、「嫌だなー」とか、みんな思い思いの愚痴を漏らしている。全体がざわざわする中、ブルドッグ先生は悠長に黒板を消している。最後の考える時間を与えてくれているのだろう。先生の後ろ姿をよく見てみると、頭頂部が薄かった。あれは五円……いや、十円か。いつも怖い顔をしている分ストレスが多いのだろうか。

 あらかた消し終わると、先生は一番手のわたしの席に歩み寄り、小声でこう言った。

「一番、いけるか?」

 先生の気遣いに、見られてほしくはないであろう部分をじろじろ観察していた浅ましい自分を恥じた。昨晩作った台本をぎゅっと握りしめ、こくりと頷いた。

「よぅし、そろそろいくぞー。じゃあ軽くでいいんで出席番号順に前に出てどうぞ」

 台本を置き、しずしずと教壇に立った。教室は静かになった。そんなにシーンとされたら緊張するから適度にざわざわしていてほしい。

 田山くんと目が合った。地味グループの女子も、ドン引きしていた女子も。みんな、わたしを見ている。一度目を瞑った。外の世界から隔絶した。すると、無の視界はわたしの世界に変わった。そうだ。今だけはわたしの世界、わたしの時間なのだ。

 ――閉じた目をカッと開いた。

「初めまして〜! 虹の上の桃園から舞い降りた、朝戸衣百恵でーす♪ あ、『あざとい』じゃないよお、『あさとい』だよお! 遠慮せずに『もえたん』って呼んでねえ!」

 腰に手を当て、横向きにピースサインを決める。ウィンクも忘れずに。

「好きな食べ物はぁ〜、桃園に住む花の妖精さんおすすめの、ポンパドゥール婦人の微笑みのカスタードピーチパイ♪ 嫌いな食べ物は梅干しです。あのねあのね、わたしが住んでいる桃園はね、住人さんが少なくってとっても寂しいの……。だからね、桃園の庭師さんになって、もえたんと一緒に素敵な桃園にしよっ♪ いつかみーんなまとめてもえたんだけの庭師さんにするから、覚悟しておいてね♪ これからよろしく〜♪」

 ああ……これは……やり過ぎた。でももう、遅い……。

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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ!萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(`・ω・´)ゞ (2021年7月25日 10時) (レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい!!いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ!?!? (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして!こんな小説を求めていました!この小説を読んだ方が、ぶりっ子=悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね!ももたんめっちゃ好きです!頑張ってください〜! (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」  握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます!!確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました(笑)「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね(汗)夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:豆の字 | 作成日時:2019年9月9日 17時

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