一周回ってぶりっ子を許せる小説

1-11.ぶりっ子ちゃんの始祖 ページ12

 

　わたしは何回失敗すれば気が済むのだろう。今回ばかりは大失態だ。先生含むクラスメイト全員に人間性を疑われるレベルの激痛ぶりっ子キャラを晒してしまった。

　魂が抜けた状態のまま帰宅し、そのままベッドに横になった。制服にホコリが付いても気にしない。今は部屋着に着替える気力すらない。

　みんなの自己紹介は何も覚えていない。名前と顔を覚えるチャンスも、共通点を見つけるチャンスも、友達を作るチャンスも、すべて失ってしまった。わたしにはもう何もない。……ああ、ひとつだけあった。

　ぶりっ子。

　それに触れた瞬間、歯車は狂った。まさに呪いだ。禁忌だ。パンドラの箱だ。軽い気持ちで踏み込む世界じゃなかった。わたしは禁断の属性を手に入れた代わりに、幸せな学校生活を犠牲にした。今さら捨てても運命は覆らない。なんとも割に合わない取引だった。
　
　無心でスマホをいじる。ブックマークの欄にはぶりっ子の勉強に使ったサイトや動画が並んでいる。全部消してやろうかと自暴自棄になりながらスクロールした。するとうっかり操作ミスで動画を開いてしまった。

　動画サイトに飛ばされ、広告が終わった後、可愛い女の子が中央にパッと現れた。

「やっほーワタシの可愛いお魚さんたち♪ 亜久亜(あくあ) りうむだよぉ〜」

　海色を基調とした部屋をバックに、水色の長いツインテールを揺らしながら笑顔で手を振ってくれる。周りは海の生き物のぬいぐるみに囲まれていて、中でもいつも隣に映っているひときわ大きなジンベエザメのぬいぐるみが目を引く。

　紛れもなく、わたしが初めて見たぶりっ子の動画だった。彼女に私淑して今のわたしが出来上がったようなものだ。


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↑ぶりっ子系Y◯utuber 亜久亜 りうむちゃん。


『こんぺいとう＊*メーカー』様より作成致しました。

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