2-10.ぶりっ子ちゃんの九番 ページ28
「くじを引く順番は端っこ同士でじゃんけんして勝った方からスタートで」
端っこということで、廊下側の最前列端っこの男子と、その反対側の最後列端っこの塒さんがじゃんけんすることになった。わたしは真ん中だから、どっちが勝っても順番自体はほとんど変わらない。
勝ったのは塒さんだ。ほっとしたのか、申し訳ないのかはっきりしない表情が最前列から見えた。
塒さんを先頭に、ぞろぞろと列をなし、黒板に来た。するとその時、彼女の身体が硬直した。自己紹介の記憶を思い出したからだろうか。けれど数秒後には我に返ったように動き出した。まるでガラス細工を扱うかのように、筒に入った割り箸をおずおずと引いた。
最前列なら大いに希望を持てる。最前列の番号であってくれと塒さんの持つ割り箸に強く念を込めた。
が。その願いは無情にも届かなかった。塒さんは廊下側の最後列端っこに名前を書いた。よりによって一番後ろ。しかも端っこ。絶望しそうになったが留まった。もう致し方ない。どんなに嘆いても覆らない。最前列しか引けない奇妙な体質だが、最後列を引くしかない。
塒さんの隣の席番号は九番だ。わたしの番が来るまで、九番を死守せねばならない。しかし守るだけじゃない。その九番をわたしが引かねばならない。そんなことが本当に出来るのか。
続々と割り箸くじを引いて、ポツポツと黒板に名前が増えだす。ひとりひとりチョークで名前を書く度、神経がすり減る音がする。緊張と脱力が短時間で繰り返され、身体を動かしてもいないのに疲労感が蓄積される。
「席替え! 席替え! 今月はどこだろな〜」
そんなわたしとは対照的に、順番が回ってきた女子リーダーは割り箸くじを前に軽やかなステップを踏んでいた。いつにも増して彼女を羨ましく思った。
「これだぁっ!! あっ!」
勢いよく引き抜いた拍子に、女子リーダーの手から割り箸が滑り落ちた。
「もう少し落ち着いて引け」
「んへへ〜ごめんなさ〜い……」
呆れ気味の先生に、明るく舌を出してみせる。みんなは笑う。空気が和む。……本当に、わたしの理想像そのものだ。
床に落とした割り箸を拾いながら、その数字を読んだ。
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酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ!萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(`・ω・´)ゞ (2021年7月25日 10時) (レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい!!いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ!?!? (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして!こんな小説を求めていました!この小説を読んだ方が、ぶりっ子=悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね!ももたんめっちゃ好きです!頑張ってください〜! (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ!゛!」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます!!確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました(笑)「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね(汗)夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです! (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆の字 | 作成日時:2019年9月9日 17時