2-5.ぶりっ子ちゃんの昆虫 ページ23
「やっほーワタシの可愛いお魚さんたち♪
その日の夜。入浴を終えたわたしは絨毯に寝そべって、今日アップされたりうむちゃんの動画を見ていた。
「今日はぁ〜、夏休みが終わっちゃってちょっぴりションボリ中のお魚さんを笑顔にするために！ 昆虫食に挑戦しちゃうよ〜♪」
楽しそうにツインテールを揺らしながら、タコやシャチがあしらわれたお皿をテーブルにコトリと置いた。そこに載った「モノ」が何かわかった瞬間、わたしは思わず「ひぃっ」と声を上げてしまった。
「亜久亜りうむはとっても可愛いからぁ〜このタガメさんを可愛くいただいちゃいまぁす♡ ジンベーくんも応援しててねぇ♡」
口元を隠し、「リウムチャンガンバッテ！」と裏声を出す。その声色は心なしか震えている。そして人形のように真っ白な愛らしいその手で、タガメをこわごわと掴んだ。顔が引きつっている。やめて、と心の中で叫ぶが、りうむちゃんはとびきりの笑顔をわたしに向けながら、タガメを口に運ぶ。
バリ、という音が聞こえたと同時に、わたしは両目を覆った。
「ゥ゛えッ！！ げホッっ゛ゲホッ！！゛」
覆った指の隙間から、うずくまってむせるりうむちゃんの姿があった。お皿に載ったタガメは頭を失っていた。紛れもなくそれは今、りうむちゃんの体内にある。
早送りが始まった。かじる、悶絶、かじる、悶絶を三倍速で繰り返し、やがて元のスピードに戻ったとき、タガメは跡形もなくなっていた。
「ごちそうさまでしたぁ♡ ワタシってとっても可愛いからぁ〜タガメさんとも仲良くなれちゃった♪ お魚さんたち、元気になったぁ？ じゃ、まったね〜♪」
エンディングが流れる。放心状態で高評価ボタンを押した。ちらっと見えたコメント欄はりうむちゃんの勇姿に騒然としていた。
あまりの体当たり企画に言葉を失った。りうむちゃんは時々体を張るが、まさか昆虫食に手を出すとは思わなかった。心境の変化だろうか。
とはいえ、勇気を貰えた。笑顔ウィンク投げキッスのぶりっ子三コンボが空振りしてうじうじしていたのが馬鹿らしくなった。
明日は席替えの日だ。人生で一番大切な席替えだ。
くじ引きで
やっと、わたしに友達ができるはずだ！
2-6.ぶりっ子ちゃんの昼食→←2-4.ぶりっ子ちゃんの助太刀
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 323人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
酔風 - 面白かったです…夏目先輩かっけぇ！萌ちゃん許せるどころかファンになりそう…。続編読んできます(｀･ω･´)ゞ (2021年7月25日 10時) (
レス) id: d8696aafac (このIDを非表示/違反報告)
夜瑠 - 夏目せんぱぁああい！！いつか、いつか言紡高校に入学してもいいですかっ！？！？ (2021年7月19日 17時) (レス) id: ef33b3228d (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - 初めまして！こんな小説を求めていました！この小説を読んだ方が、ぶりっ子＝悪女とかでは無くて、ぶりっ子は一つの個性なんだなって思ってもらえると良いですね！ももたんめっちゃ好きです！頑張ってください〜！ (2021年7月17日 15時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
桜夜桜もち - 「ふんぬぁぁああ゛ぁあ゛ァあッ！゛！」 握力計ったときのこれ好きですwwwwwww (2021年7月17日 14時) (レス) id: 54667db88c (このIDを非表示/違反報告)
豆の字(プロフ) - 真白さん» ありがとうございます！！確かにぶりっ子の言動を見ていると、自分にも思い当たる節があったり……なんてことが自分にもあったりしました（笑）「ぶりっ子のふり見て我が振り直せ」ですね（汗）夏目先輩を好きになってもらえてすごく嬉しいです！ (2021年7月16日 18時) (レス) id: dee9e908a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：豆の字 | 作成日時：2019年9月9日 17時
