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名前を告げれば鬱先生の表情が、ほんの少しだけ変わる。
「Aさんね、話はよう聞いてますよ」
「話？」
チーノくん、私のことをここの五人に話していたのか。
「……さっきの赤いマフラーって、誰かからの貰いもんですか？」
「そうですね」
赤いマフラーってそんなに珍しいものだろうか。随分と興味津々だ。
形容しがたいこの空気を、チーノくんが打ち破る。
「Aさん何頼みます？」
「チーノくんのおすすめでお願い」
彼に任せておけば大丈夫だろう。
注文は済まされ、店員と入れ替わりで誰かが来た。残りの一人だろうか。
「あ、トントン来たんか」
……トントン？
見れば確かにあの頃の面影がある初恋の人がそこにいる。久しぶりに会ったものだから、一瞬誰だか分からなかった。
しかしそれ以上に驚いたことがある。マフラーだ。トントンは私があげたのと同じ色のマフラーを首に巻いていた。
「仕事立て込んでてアカン、わ……」
バッチリと目が合う。
どう反応すれば良いのか分からなくて、結局当たり障りのないことを言う。
「……久しぶり。あの……私のこと覚えてる？」
「……覚えとる」
まだ覚えていてくれたのか。最後に会ったのは大学生だったはずなのに。
「やっぱりトントンが言っとったのって、Aさんのことやったんや」
どういうこと？ 納得がいったように話すチーノくん。私のことを話していたのってチーノくんじゃなかったの？
「あー……」
トントンも心当たりがあるのか、気まずそうに手を頭に持っていく。
立ち話もなんだしと、トントンは一先ず空いた席に座った。……正面って居心地が悪いな。
「話って？」
「大したことやあらへんよ。昔の話をしてただけや」
誤魔化すように笑って、メニューで顔を隠されてしまった。
あのマフラー、私があげたやつだろうか。いや、似た色の市販のマフラーかな。何年も前の話だ。今も使ってくれているわけがない。
「トントンのマフラーってAさんがあげたんすよね？」
「え、あれって私があげたやつなの？」
語弊があった、今の言い方では渡した記憶がないように聞こえる。
すぐさま訂正して、改めて訊きなおす。
「今も使ってくれてるの？」
「まあ……」
どちらともとれる反応で困る。結局どちらなんだ。
「Aさんがあげたやつやろ。いつも上機嫌に言うとるんやから」
そう言ったのはロボロさん。
嬉しい限りだ、贈った甲斐がある。
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脳内お花畑(プロフ) - ざらめさん» ありがとうございます！お褒めのお言葉嬉しいです！赤いくつの続きですね！お時間いただきますが是非書かせてください！！ (2020年12月10日 2時) (
レス) id: 1816461051 (このIDを非表示/違反報告)
ざらめ - あの、凄く好きです！どのお話しも内容が深くて、展開が読めずいつもドキドキしながら読ませて頂いてます！中でも「赤いくつ」が大好きなのですが、もしよろしければ続きを書いて頂けないでしょうか...？長々と申し訳ありません。これからも応援しています！！ (2020年12月10日 0時) (レス) id: e42013c8e8 (このIDを非表示/違反報告)
脳内お花畑(プロフ) - 森安里さん» コメントありがとうございます！狙い通りぞわってなってもらえたようで良かったです！！お褒めの言葉嬉しいです！！ (2020年11月19日 18時) (レス) id: 1816461051 (このIDを非表示/違反報告)
森安里(プロフ) - 蛇足で鳥肌が立ちました。最高です。ありがとうございます! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 0d0cef0762 (このIDを非表示/違反報告)
脳内お花畑(プロフ) - Qさん» ありがとうございます！！掛け持ちをしているので更新頻度はあまり高くないのですが、どうぞよろしくおねがいします！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: 999cc5b25a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：脳内お花畑
| 作成日時：2020年9月26日 15時
