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先が長くないと判断したら、即、一人娘に料理を教えるとは、よっぽど肝が据わったお母さんだったのだろう。そう言えば、僕と同じように別の世界から来て、この世界に永住することを決意した人だっけ。
「もう助からないって時に、なんであいつはこうまで前向きなんだろう。俺は結構落ち込んだのに、あいつは、『まあ、そりゃ親が先に死ぬんだし』ってあっけらかんとしていたんだぜ? 果てに、『今したいことを全部したら、死ぬのが早いか遅いかなんて、あんまし関係ないわよねー』とか言い出した」
男前すぎるよ。そうびちゃんのつぶやきと僕の想いが一致した。
余命は延びないって散々言われたのに、余命が過ぎても、病気だと忘れてしまうぐらい元気だった。しょっちゅう入退院繰り返しても、家に帰ってくるときは何時も元気で、娘たちには弱音を吐くなんてことは絶対になかったし、仕事もフツーにしてたし、というか打ち込んでたし、だから旦那のことはほったらかしだし……と、最後らへんでただの愚痴に変わっていく。やめて、なんだかこっちまで悲しくなってくるから。
「そういえば……お母さん、今思えばあまり家に居なかったね」
「思い出してきたか」
「うっすらと。桃花ちゃんたちや家政婦さんも居て、あまり寂しい想い出がなかったから、すっかり忘れていたけれど。お母さんが居ないの、そういうものだって思っていたし」
「……このまま、治るって思ったんだ。ガンの部分も小さくなってきたって医者から聞いていたし、大丈夫だと思っていた。……だけど、あいつが死んで」
そこで、そうびちゃんの表情が強張った。過去の罪を咎められるとでも思ったのだろう。けれど、直太さんの言葉には、まだ続きがあった。
「……あいつが書いていた日記だ。遺品の整理をしている時、見つけた」
少し大きい、年季の入ったその本を卓上に置いた。ペラペラとページをめくる音が、あるページの所で止まった。無言でそれを渡される。読め、ということだろう。二人してその日記を覗くと、少し黄ばんだ紙には、小さく、ハッキリとした文字が書かれていた。
『私はもうすぐ死ぬだろう。多分、小さな風邪でも、身体は持ってくれない。
不思議だ。自分の死が判るなんて。今まで、死とは唐突に訪れるものだと思っていたから。天災と同じように。
自分が望む死を迎えられるとは、随分と私は、幸運だけが廻った人生だったようだ(中略)』
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The Freedom.(プロフ) - 火矢 八重さん» はい、頑張って下さい! (2014年4月20日 21時) (レス) id: b11641b752 (このIDを非表示/違反報告)
火矢 八重 - The Freedom.さん» 忘れませんよ、あの作品でたった一人コメントしてくださったんですから!w うお!? 期待されてる私!? じゃあどしどし作品作らないと!! コメントありがとうございますた! (2014年4月20日 20時) (レス) id: fc178a757e (このIDを非表示/違反報告)
The Freedom.(プロフ) - 火矢 八重さん» あ、覚えていてくれたんですね!嬉しいです!いやあ、覚えて無いかな〜と思って一応初めましてからにしたんですよね…;;また他の作品も沢山見に行きますね! (2014年4月20日 20時) (レス) id: b11641b752 (このIDを非表示/違反報告)
火矢 八重 - The Freedom.さん» うお!? 五か条読んでくださった方ですね!? こちらの作品も読んでくださりありがとうございます!! 私も、この後腐れないあっけらかんとした終わりが気に入っているので、凄く嬉しいです! こちらこそ、ほんとうにありがとうございました!! (2014年4月20日 19時) (レス) id: fc178a757e (このIDを非表示/違反報告)
The Freedom.(プロフ) - 初めまして!完結おめでとうございました( ´ ▽ ` )。作者さんのこの作品、読むたびに惹きこまれていきます。個人的に終わり方が特に好きです。素晴らしい作品を読ませて頂き、ありがとうございました! (2014年4月20日 19時) (レス) id: b11641b752 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:火矢 八重 | 作成日時:2014年2月15日 20時