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知ってるんだよ、と掠れた声で、謙三君は言った。
「俺はそうび姉にとって、弟でしか見られてないって、んなの知ってんだよ……」
……その言葉で、理解できた。
この子は、そうびちゃんのことを、『お姉ちゃん』と慕っているわけじゃないのだ。
それだけと言うと、謙三君は見えないところまで走って去ってしまった。
「大丈夫、多分先に街についてるわ。後から合流しましょう」
全く、と桃花ちゃんは言う。
「あの子、性格素直じゃないから、直接聞けないのよね……。聞きたいからついてくるって自分から言った癖に」
「あの……」
どうも僕は色恋沙汰が苦手だ。興味がないわけじゃないけれど、ここであの謙三君の恋愛事情を暴露するのもどうかと思う。何とかして話を逸らそうとするが、相手はそういうのが好きな女の子。僕は太刀打ちできない。
「ねえ、Aさん。アンタはお姉ちゃんのこと、どう想ってるの?」
「どうって……」
どうもこうも、と思う。僕たちの間にある繋がりは、桃花ちゃんが思っているようなものじゃない。
僕は困っていて、そうびちゃんはそれを助けてくれた人。それだけで……。
『私は、Aさんが許されるまで、祈ってあげます』
……微睡の世界で、ゆらゆらと聴こえた声。
あの声は、酷く安心して、とても優しい。
僕はあの声を貰って、どう思った? 助けられた、救われた、でもそれだけじゃない。
……望んだ。暗転した時、それでも脇の下から伝わった温度を。
殆ど深い眠りについていながらも、確かに彼女の温度を、求めた。
……人が恋しかったのか、家族が恋しかったのか。
でもこれは、絶対に、自分の母親や妹に向けるようなものじゃない。
もっとドロドロで、醜くて、かわいげのない感情。なのにそれは甘くて、濃厚で。
謙三君と同じで、でも、謙三君のほうが、僕のよりも綺麗で。
それがいったい何なのか、流石に僕も判ってくる。
ユラユラと噴水の水面が揺れる。その影を、桃花ちゃんの瞳が映し出し、僕の心をかき乱す。
何で。今まで、帰ることしか考えなくて、それだけが望みで、だから帰る術が今日で判ると思って、凄く嬉しかったのに。
どうして、この子はそのことに気づかせるんだ。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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革ベルト
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あずきいろ
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西 - この方角に福があるはずです
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おみくじ結果は「末凶」でした!
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The Freedom.(プロフ) - 火矢 八重さん» はい、頑張って下さい! (2014年4月20日 21時) (レス) id: b11641b752 (このIDを非表示/違反報告)
火矢 八重 - The Freedom.さん» 忘れませんよ、あの作品でたった一人コメントしてくださったんですから!w うお!? 期待されてる私!? じゃあどしどし作品作らないと!! コメントありがとうございますた! (2014年4月20日 20時) (レス) id: fc178a757e (このIDを非表示/違反報告)
The Freedom.(プロフ) - 火矢 八重さん» あ、覚えていてくれたんですね!嬉しいです!いやあ、覚えて無いかな〜と思って一応初めましてからにしたんですよね…;;また他の作品も沢山見に行きますね! (2014年4月20日 20時) (レス) id: b11641b752 (このIDを非表示/違反報告)
火矢 八重 - The Freedom.さん» うお!? 五か条読んでくださった方ですね!? こちらの作品も読んでくださりありがとうございます!! 私も、この後腐れないあっけらかんとした終わりが気に入っているので、凄く嬉しいです! こちらこそ、ほんとうにありがとうございました!! (2014年4月20日 19時) (レス) id: fc178a757e (このIDを非表示/違反報告)
The Freedom.(プロフ) - 初めまして!完結おめでとうございました( ´ ▽ ` )。作者さんのこの作品、読むたびに惹きこまれていきます。個人的に終わり方が特に好きです。素晴らしい作品を読ませて頂き、ありがとうございました! (2014年4月20日 19時) (レス) id: b11641b752 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:火矢 八重 | 作成日時:2014年2月15日 20時