化け物が百三十四匹。 ページ8
「……〜！」
「！！」
走りながら考えていた俺の耳に、か細い悲鳴が通り抜けた。それは俺の思考をばつりと切り落とし、反射的に俺は足を止める。
「一之瀬？！何してるんだ？！」
かなり小さいその声はどうやら轟には聞こえてねェらしい。それもそうだろう。この声の元はおそらくここら辺にはいない。俺は耳は良い方だ。
あの怪物に襲われてるか、火事に巻き込まれてるか、降ってきたコンクリートで怪我をしたか、瓦礫の下敷きになってるか。
黙って考えてる暇なんてねェ。
俺は轟に叫んでから声が聞こえた方に走り出した。
「先行ってろ！俺は後で行く！！」
「は？お前どこに」
「なんでもいいだろ！？さっさと行けやゴラァ！」
意味わかんねぇ、と呟いた轟が走り出した音を聞き俺は速度を上げた。
「いやぁ、誰か！！誰か助けて！」
「うえぇ、怖いよぉ……！誰かぁ！！」
走った先に見つけたのは女とガキ。女がガキを抱えて必死に何かから逃げるように走っていて、ガキは女にしがみついてる。
女は靴を履いてねェ。逃げてる途中に脱げたんだろう。ガラスや瓦礫を踏んだせいでその足は血だらけだ。女の服や体は傷だらけで、でもガキは無傷っつってもいいぐらいピンピンしてる。
これは女がガキを守ってた証拠だ。
「グオオオゥ」
「ひっ……！？」
後ろから追いかける怪物を女が一瞬振り返って見た瞬間、恐怖でか女は思い切り転んだ。その時も女はガキを抱えて離さなかったが、どっかを打ったらしいガキは痛い痛いと一際大きく泣き叫びだした。
女はごめんねと叫び過ぎたせいで掠れた声で謝り、強くガキを抱きしめる。女の足はガクガクと震えて限界を訴えていた。
怪物は二人にどんどん近づいて行く。
「あぁあ、誰か、この子だけでもいいから、だから助けてぇ……！！」
女がぽたりと涙を零した瞬間、俺はバレるかもしれねねェとか、そんなことも何も考えずに呟いていた。
「『動くな』」
「！」
途端に怪物は硬直する。不思議そうな呻き声をあげるソイツに、女はえ？と戸惑いながらずりりと後ろに下がる。
俺は二人と怪物の間に立った。
「何ぼーっとしてんだ。さっさと逃げろよ、死にてェのか？」
「あ、え、で、でもあなたこそ逃げないと危な」
「うるせェな。テメェに人の心配してる暇なんてねェだろうが。そのままじゃガキ諸共死ぬぞ」
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バルサミコ酢(プロフ) - この作品昔からめちゃくちゃ好きです！更新楽しみにしています！ (2021年12月3日 11時) (
レス) @page50 id: 7fcdff5f84 (このIDを非表示/違反報告)
ベリー(プロフ) - この作品大好きです！お気に入り登録して更新楽しみにしているので、作者様のペースで是非更新頑張ってください！ (2021年12月1日 18時) (レス) @page50 id: 9c552e7ae4 (このIDを非表示/違反報告)
肉まん - この小説とても面白いです！更新楽しみにしています。 (2021年10月29日 17時) (レス) id: 4f984dbf4f (このIDを非表示/違反報告)
水泳進化人(プロフ) - ヤムチャってるのか………。 (2021年10月4日 22時) (レス) @page50 id: ddf2ca19b2 (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - わぁぁ…!!やったー!!大好きな作品が更新されてる!!と思って本当に跳び跳ねました笑 作者様のペースで、頑張ってください。いつでも、更新待ってます! そして何よりお身体、ご自愛されて下さいね!! (2021年9月17日 13時) (レス) id: e247cabc05 (このIDを非表示/違反報告)
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