化け物が百四十匹。 ページ14
轟side
思わず一之瀬の胸ぐらを掴んだ。
我慢できなかった。あいつの言い方があまりにも酷かったから。
飯田は確かにやっちゃいけねぇことをやろうとした。でもそれは実際にはやってねぇ。未遂だ。
なのにあいつは再犯率だとか言い出して、飯田にヒーローになれないとまで言い放った。飯田は犯罪者じゃねぇのに。
間違えそうになったら止めて、間違えたらそれを一緒に受け止めてやるのが友達だろ。
そう言いたかった。
その後突然現れた脳無が緑谷を攫って、ヒーロー殺しが脳無を倒した。
ヒーロー殺しの迫力には誰もが圧倒されたし、俺も心臓が激しく脈動して息が荒くなった。冷や汗が流れ、背筋を寒気が襲う。
そいつの言葉一つ一つには自分の曲げられない信念みたいなものが宿ってていて、俺は目が離せなかった。
「来い。来てみろ贋物ども。俺を殺していいのは＿＿
そう叫んだのを最後に何も言わなくなったヒーロー殺し。クソ親父が「気を失ってる」と呆然と呟いた瞬間、緊張の糸が切れて俺は地面に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ」
必死に息を整える。
その最中、視界の端に一之瀬が写った。
この場でクソ親父の次に動けたのは一之瀬だった。さっきまで俺の後ろにいた一之瀬は何かに引っ張られるようにヒーロー殺しの方へ歩いていく。
そしてそいつが俺の横を通り過ぎた瞬間、違和感を抱いた。
「！」
それが何かすぐに気づいた。
いつも顰め面の一之瀬が、置いてかれた子供みたいな顔をしていたからだ。
「待て！」
俺は咄嗟に先に行こうとする一之瀬の腕を掴んだ。
すると一之瀬は抵抗することもせずに歩みを止める。
一之瀬は小さく呟いた。
「何が違うんだよ、オールマイトと他のヤツらと」
「……？」
「オールマイトだって贋物だろ。全部嘘っぱち。助けられる人間なんてごく一部じゃねェか。なァ、何が違うんだ。教えろよ」
俺の方なんて見向きもせずに、一之瀬は気を失ったヒーロー殺しに訴えかけている。
その後ろ姿に、俺は可笑しな幻覚のようなものを見た。
一之瀬の体の中心に通ってる太くて長い軸のようなものが、徐々に曲げられていく幻覚。ぐにゃりと見えたそれに、俺は思わず目を擦る。するとその軸は消えた。
俺は少し疲れているのかもしれない。
「結局、オマエも他のヤツらと同じなのかよ……！」
絞り出すように零す一之瀬を、俺は黙って見ることしかできなかった。
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バルサミコ酢(プロフ) - この作品昔からめちゃくちゃ好きです！更新楽しみにしています！ (2021年12月3日 11時) (
レス) @page50 id: 7fcdff5f84 (このIDを非表示/違反報告)
ベリー(プロフ) - この作品大好きです！お気に入り登録して更新楽しみにしているので、作者様のペースで是非更新頑張ってください！ (2021年12月1日 18時) (レス) @page50 id: 9c552e7ae4 (このIDを非表示/違反報告)
肉まん - この小説とても面白いです！更新楽しみにしています。 (2021年10月29日 17時) (レス) id: 4f984dbf4f (このIDを非表示/違反報告)
水泳進化人(プロフ) - ヤムチャってるのか………。 (2021年10月4日 22時) (レス) @page50 id: ddf2ca19b2 (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - わぁぁ…!!やったー!!大好きな作品が更新されてる!!と思って本当に跳び跳ねました笑 作者様のペースで、頑張ってください。いつでも、更新待ってます! そして何よりお身体、ご自愛されて下さいね!! (2021年9月17日 13時) (レス) id: e247cabc05 (このIDを非表示/違反報告)
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