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枢のことがどうしようもなく好きで、そんな枢が勇気を振り絞ってついに自分の奥底にある黒々としたものに踏み込んで、あなたの全てを知りたいと言ってくれたことが嬉しくて、愛おしくて。だから話すべきだと思った。話さなければならないと。
けれど好きだからこそ嫌われたくなかった。

自分の過去を話して、彼が自分を軽蔑の目で見たり、少しでも心が離れていくことが恐ろしくて仕方がなかった。だからこそ、今まで話そうとはしなかったことだ。

自分の中で処理できていればこうはならなかったのに。ところどころでその歪んだ過去の片鱗を見せてしまうから、彼を悩ませこんな行動に移させてしまった。どうしようもない、どうしようもない。

マルスの隊長であるあの猪又誓が、こうして女々しい考えに至ってしまっていることが実に情けなくて、滑稽で。誓は思わず、はは、と温度のない乾いた声で、自分を嘲笑った。

【ミネルヴァ】畠 道雄→←小説【動き出した時間】



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作者名:龍之介 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月4日 22時

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