化け物が九十七匹。 ページ10
＊
「『でかい岩作れ』」
次の日。
俺は朝から近くの山で個性の練習をしていた。
明日も学校は休みだから疲れを気にすることもなく、ただひたすらに命令をし続ける。
最初の命令で、目の前に直径十メートルぐれェの岩が現れた。
「『俺を浮かせろ』」
次の命令で俺の体が宙に浮く。
「『蹴る力強くしろ』」
そして足を振り上げて……。
「『落とせ』」
その言葉と共に俺の体は岩の上に落下した。
けどぶつかる直前で俺は軽く岩を蹴る。
すると、見事に岩は砕け散った。
「おし」
あちこちに散らばった元は岩だった欠片を眺めながら、俺は手を握りしめた。
変わってねェ。
前と変わらず全部の命令が実行できた。
大丈夫だ、なまってない。
俺はそう確信して、次は木ィ倒しまくるか、と舌なめずりをする。
「っ！？」
だが一歩踏み出そうとした瞬間、バクン！と強く体の芯に響くような衝撃が俺の心臓を襲った。
俺は思わず目を見開き、前に傾いた体を支えるように片膝をつく。
「は、はっ……」
理由のわかんねェ現象に呆然としていると、さっきほどじゃねェがまだ俺の心臓が強く脈打ってることに気づいた。
バクバクとかなりの速さで揺れている。
「ッうぐ……！」
酸素が足りねェ。
心臓が体ん中を暴れまわってる。
息が、できねェ。
俺は心臓を押さえつけるように自分の胸ぐらを握りしめ、うずくまった。
なんだ？
なんでこうなった？
原因はなんだ。
個性を使い過ぎたから？
んなわけねェ。四回ぐらいでこんなことにはならねェ。
何かの病気にかかってる？
いや馬鹿かよ。俺がかかるわけねェだろ。
じゃあ久しぶりに個性を使ったから？
……そうだ。そうに違いねェ。
久しぶりだったからだ。だから体がついてこなかった。
ぜってェそうだ。
俺はこの状況の理由を無理矢理決めて、やっと落ち着いてきた心臓の動きに必死に息を吸った。
「は、は、げほっ！」
むせながらも何回か深呼吸をして酸素を取り込む。
そして脈拍数も呼吸も正常に戻ったころ、立ち上がった俺はおもむろにそばにあった木を殴りつけた。
「ッ意味わかんねェ！！クソ、腹立つなァ！」
久しぶりに個性を使ったから？
だからこうなったって？それこそ馬鹿げてる。
「〜ッ死ねェ！！」
苛立ちと僅かな胸騒ぎをかき消すように、俺はもう一本の木を蹴り倒した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1498人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
