化け物が九十五匹。 ページ8
「でもそれを、緑谷が取り払ってくれた」
「！」
「……いや、取るなんて優しいもんじゃねぇな。ぶっ壊したんだ」
「……アイツが？」
「あぁ。頼んでもいねぇのに勝手に人の家庭事情に首突っ込んで、勝手に俺の悩んでたもんぶっ壊していきやがった」
自分だって勝ちてぇくせに、俺を救うことを優先したんだ。
そう言って笑うソイツが、俺にはなぜか泣きそうに見えた。
「なぁ、一之瀬」
「んだよ」
「お前は俺と自分の過去を比べて、同じじゃないって言ったけど。
＿＿＿＿苦しんだのは、辛い思いしたのは、同じだろ」
「っ！！」
泣きそうな笑みが、俺に向く。
その初めて見る表情に、柔らかい声に。
気がつけば俺は息を止めていた。
「お前の父親は個性婚だってことを隠してたんだろ？でも今お前はその事実を知ってる。
……過程がどうであれ、今まで隠されてきた分初めて事実を知ったときの衝撃は大きかったはずだ」
「ッうるせェ！」
「いつ知ったかは知らねぇが、少なくともその話を理解できるような年になってからだろ。
ってことはお前は最低でも生まれてからの数年間、何も知らずに家族と暮らしてたってことだ」
「黙れ！」
轟は、怒鳴る俺に訴えかけるように呟いた。
「なぁ。お前さっき、俺の中の母さんはいつも笑ってるって言ってたよな。
……でもそれはお前にとって、泣いてる姿見るよりずっと辛いことなんじゃねぇのか」
「ッ黙れっつってんだろ！！」
耳に流れてくる言葉に耐えられなくなって、俺は近くに落ちてた石を拾って思い切り轟にぶん投げた。
「！」
轟はそれに気づき、目を見開く。
でも何故か棒立ちで動かず、避けようとしなかった。
ゴツンと鈍い音が鳴り、轟の額に血が滲む。
「……悪ぃ。調子乗って言い過ぎたな」
そんな状況で、謝ったのは轟だった。
腕でぐいっと額の血を吹いて、自分を落ち着かせるように深く息を吸う。
「ッ……！！」
俺は荒い息を吐きながら、両手を握りしめた。
図星だった。轟の言葉が。
母さんが死んで、全部の事実を知ったとき。
ああ、俺のせいで母さんは死んだんだと。
俺が母さんを殺したんだと気づいて。
でも俺が母さんのことを考える度に、母さんは俺に笑いかけるから。
俺のせいで死んだのに、俺を責めるべきなのに。
幸せそうに微笑むから。
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名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
