化け物が九十匹。 ページ3
＊
結果発表及び閉会式。
多分今頃俺以外のヤツらはソレをやっているんだろう。
でも俺は行かなかった。
とてもじゃねェけど、あの数の人間共に囲まれて平気でいられる気分じゃなかったからだ。
「…………」
俺は、保健室に向かった。
一つ目の理由は、さっき言った通り閉会式をサボるため。
二つ目は、包帯を取ってくるため。
俺が最後に包帯を外して外に出たのはもう何年も前の話だ。
だから、顔全体がスースーする感覚が慣れなくて気持ち悪かった。
……確かに個性を使えば包帯は一瞬で手に入るが、今は使いたくねェ。
それに、どうせあのババアも閉会式に行ってるだろうからチャンスだと思った。
……なのに。
「おや。やっぱり来たねぇ」
「！？」
保健室のドアを雑に開けたら、ババアは笑顔でそこに座っていた。
「おま、なんでいんだよ！」
「あんたを待ってたのさ。来ると思ってたからねぇ」
「はァ？！」
「年寄りの勘を舐めちゃいかんよ、ぼうや」
にこにこと笑みを浮かべるババアに、俺は椅子を蹴り上げそうになったがなんとか我慢した。
相手はババア、相手は年寄り、相手は老いぼれ……。
呪文のように心の中で繰り返していると、ババアは言った。
「包帯もらいにきたんだろう？」
「あ？…………あぁ、そうだけど」
「私が巻いてやろうかい？」
「ふざけんな自分でできるわ！」
いいからさっさと寄越せ！と怒鳴った俺に、ババアはすぅっと目を細めた。
「そうさねぇ。じゃあ、ちょっと条件を作ろうかね」
「は？」
「私がこの包帯をあんたに渡す代わりに、私はあんたの治療をする」
「！」
「どうだい？」
手元に置いた包帯を指でくるくると弄りながら、ババアは言う。
それに俺は勿論反抗した。
「ぜってェやだ。断る」
「ならこれはあげれないねぇ」
「…………力づくで奪ってやる」
「無力な年寄りに乱暴するのかい？そりゃ酷い話だ」
どっか余裕のある顔ですらすら話すババアに、ぐっと俺は黙り込む。
「別に悪い話じゃないと思うけどねぇ。あんたが包帯を巻いてる間にやるんだ。時間は取らせないよ」
「…………」
「あんたが言うなら、個性も使わないさ。ただちょっとした手当てだけでいいからやらせておくれ」
駄目かい？と首を傾げたババアに、俺はぐしゃぐしゃと髪を掻きむしる。
それから、ババアの前にある椅子にどさっと座り込んだ。
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名前決まらないドン(プロフ) - 戻ってくる事を祈って待っております (2019年5月11日 13時) (
レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
あげあげ！ - 主人公のツンツンデレ具合がちょうど良すぎて死にそう(吐血) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 94845ca325 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - うふさん» あなた様にこの小説が読み返されていることがとても幸福です！確かにみんな格好良いですよね…！ (2018年7月14日 13時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
うふ - 読み返すたび毎度思う、全キャライケメン。 (2018年7月12日 3時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 餅原 葵さん» 初めまして、コメントありがとうございます！一之瀬君が人気でとても嬉しいです…！そう言っていただけて本当に有難いです！更新頑張らせていただきます！ (2018年7月3日 18時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年12月25日 19時
