化け物が七十四匹。 ページ35
＊
「うふふ。何を言ってるの？そんなの当たり前じゃない。私の個性は声を『操る』。勿論、返すも奪うも自由自在よ」
女は正気の無い表情で、そう答えた。
「……じゃあ、やっぱりあの時言ったのは嘘なんだな？」
「ええ、そうよ？私が死ぬまで返せない、なんてそんな不便な個性じゃないわ。あは、騙された？」
「……」
黙秘を貫いている、という話がまるで嘘のように女は饒舌に語った。
それは相手が相澤だからか、それとも気まぐれか。
どちらにしても腹が立つ、と相澤は目つきを鋭くした。
「一之瀬に声を返せ」
「いやよ」
「理由は」
「そう言う命令なの」
「あいつらはお前を置いていった。捨てられたんだ。そんな奴に従う必要はねぇだろう」
「ふふ、本当に馬鹿ね。弔が私を捨てるわけないじゃない」
どこまでも余裕な女の雰囲気に、らちが明かないと相澤は話を変える。
「……お前と一之瀬の関係は」
「さぁね。あっちに聞けば？あ、喋れないんだっけ」
「母親だとかお前んとこの奴は言っていたが」
「うふ」
「……答えろ」
「あはは」
言葉を喋らなくなった女に、相澤の苛立ちと焦燥が増していく。
そしてもう一度質問しようと口を開く前に、女が言った。
「それより、やっぱりバレるの早かったわね。わかってたけど」
「……あ？」
「あれ、もしかして気づいてなかった？私ちゃんとヒント残してたのよ？」
「だから何のことだ」
「私が奪った後に一回。返してあげたじゃない、声」
「！！」
相澤は絶句した。
「あの時私が返したから、あのゴキブリは喋れたのよ？」
「……」
「そうしたら普通、わかるわよね？弔が言ったのは嘘だってこと」
「……」
「ふふふ、あなた満身創痍だったから気づかなかったのね。しょうがないわ。意識も朦朧としてたでしょうし」
気づかなかった。
気づけなかった。
こんな簡単なことにすら。
そんな衝撃を受けて黙る相澤を見て、女は笑った。
「そろそろ帰ったらどう？あなたが何を言おうと無駄。私は変わらないわ」
「っおまえ、」
「相澤さん、そろそろ時間です」
「！」
「ほーらね？」
思わず女の胸ぐらを掴みそうになった瞬間、機械的な声で警察官が相澤を呼ぶ。
嘲笑う女に舌打ちをしてから一言、相澤は言い放った。
「お前のその余裕、すぐに無くしてやるよ」
「！」
目を見開く女の顔を最後に、ドアは閉められた。
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研磨LOVE - お話も面白く、絵もNAOKIさん……最高すぎます！これからも更新頑張ってください！ (2018年3月17日 8時) (
レス) id: 35f41412ab (このIDを非表示/違反報告)
ホタル(プロフ) - イラストがっ…！！素敵すぎます！！ (2017年12月25日 23時) (レス) id: e79370225b (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 本題ですが、この小説は続編に行きます！話数の関係でお知らせできなかったので、失礼ですがここでさせていただきました！もしまだ付き合っていただけるという方がいらっしゃれば、後もうしばらくお付き合いください！ではまた！ (2017年12月25日 20時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 皆様、いつもいつも暖かいコメントを本当にありがとうございます！皆様のコメントのおかげで、ここまで来ることができました！本当にありがとうございます！！そして返信できなくてすみません！ですがきちんと一つ一つ大事に読ませていただいているのでご安心下さい！ (2017年12月25日 20時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
プリン - ふオォォォォォォォォォ！絵うますぎる(真顔) かっちゃんかっこいい！！更新頑張ってください！！応援しております！！ (2017年12月24日 0時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年8月6日 17時
