化け物が五十七匹。 ページ18
＊
真っ暗。
前を見ても、後ろを見ても、どこを見ても闇、闇、闇。
寒くもなく、暖かくもなく。
かといって、居心地がいいわけでもない。
そんな広さすらわからないような空間に、男は一人立っていた。
「……」
だが生憎男はそれくらいで怖気付くような性格ではない。
ひるむことなく堂々と前に進んだ。
コツコツと男の足音だけが闇に響く。
「……嗚呼、」
するとそこに、震えた女の声が落ちた。
それが聞こえたのは背後からで、男はバッと素早く振り向き誰だと叫ぶ。
いや、正確には叫ぼうとした。
だができなかったのだ。
声が、出なかったから。
「……！！」
そこで男は思い出した。
自分は声を失ったことを。
今までに起こったことの全てを。
「っ、ッ！！」
男は苦しそうに自分の首を両手で絞める。
その姿は、悲惨な現実から必死にもがいて逃げているかのようだった。
「……」
やがて男の力が限界に達し、膝から崩れ落ちそうになった頃。
誰かが、男の包帯に巻かれた手を優しく掴んだ。
「やめて」
「？！」
「やめて。お願い」
その声に男が顔を上げると、はらはらと涙を流す美しい女がそこにいた。
透き通った瞳に、艶々とした肌。
何よりもその悲痛な表情に、気づけば男は手を離していた。
「ごめんね」
「……」
「私のせいで、ごめんね。苦しい思いをさせてごめんね」
女は男を抱きしめ、そのまま頭をゆっくり撫でる。
その体温と手つきは、どこか懐かしかった。
謝罪の言葉を繰り返すその声にも、聞き覚えがあった。
その瞳も、肌も、全部。
全てが、男の大好きな人のものだった。
「…………」
ああ。
気づいた男は、目を瞑り女に身を任せた。
女は一瞬戸惑ってから、更に涙の量を増やし、強く、強くその身体を抱きしめた。
「A、A、ごめんね、ごめんね。
＿＿愛してるわ。私の、かわいいかわいい息子」
かあさん、＿＿。
男はそう口を動かした後、意識を飛ばした。
(これは幸せな悪夢の始まり。)
(惨めで哀れな、男の物語。)
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研磨LOVE - お話も面白く、絵もNAOKIさん……最高すぎます！これからも更新頑張ってください！ (2018年3月17日 8時) (
レス) id: 35f41412ab (このIDを非表示/違反報告)
ホタル(プロフ) - イラストがっ…！！素敵すぎます！！ (2017年12月25日 23時) (レス) id: e79370225b (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 本題ですが、この小説は続編に行きます！話数の関係でお知らせできなかったので、失礼ですがここでさせていただきました！もしまだ付き合っていただけるという方がいらっしゃれば、後もうしばらくお付き合いください！ではまた！ (2017年12月25日 20時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 皆様、いつもいつも暖かいコメントを本当にありがとうございます！皆様のコメントのおかげで、ここまで来ることができました！本当にありがとうございます！！そして返信できなくてすみません！ですがきちんと一つ一つ大事に読ませていただいているのでご安心下さい！ (2017年12月25日 20時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
プリン - ふオォォォォォォォォォ！絵うますぎる(真顔) かっちゃんかっこいい！！更新頑張ってください！！応援しております！！ (2017年12月24日 0時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：●龍● | 作成日時：2017年8月6日 17時
