化け物が五十三匹。 ページ14
ギュウッと心臓を握られたような感覚。
脳みそが沸騰しそうで、髪の毛を乱暴にかきむしる。
多分、今僕の体がこうなっている理由は、どうしようもない怒りと悲しみのせいだ。
僕の最初で最後の挫折は四歳のとき。
自分が個性のない、無個性の人間だと知ったその瞬間。
ずっと憧れていたヒーローたち、動画で何回も見ていたオールマイトの
その全てが早送りの映像のように頭の中に流れて、僕は泣きながら吐いた。
そうやって昔の僕が挫折した瞬間を、今目の前で、一之瀬君は味わっている。
「くそ……っ！」
もう黙って見てることなんてできなかった。
叶わない相手だってことはわかってる。
それでも、クラスメイトがこれ以上傷つくのを放っておくなんてできない。
そう思いながら僕が敵に向かって一歩踏み出した、その時。
「やめ、ろ」
「！？相澤先生！！」
瀕死状態の相澤先生が、震える手で強く僕の足を掴んだ。
「でも行かないと！これ以上、一之瀬君を傷つける訳にはっ」
「おまえが行って何になる？」
「！」
「ただ怪我を負うか、最悪死ぬだけだ」
「っ！」
先生のあまりにも冷たい言葉に、僕はそれはあんまりだろうと反論しかけた。
が、先生の表情を見て黙る。
「……悪いな」
酷く苦しそうな、自己嫌悪で押し潰されそうな顔。
そこで僕は相澤先生が一之瀬君を守れなかかったこと、そして守られてしまったことで自分を責めていると気づいた。
「あいざわ、せんせい……」
先生はうつむき、目を合わせようとしない。
……僕が先生にかけていい言葉はなんだろうか。
『先生のせいじゃありません』？
『先生が自分を責める必要はないです』？
それらを言ったところで、相澤先生には届くのか？
「……っ！」
僕が言葉に迷っていると、凛とした正直な声が聞こえた。
「相澤先生、あなたは何も悪くないわ」
「！」
「蛙吹……？」
「先生が私たちを守るために一人で敵に向かって行ったの、とても格好良かった。あなたは私にとって、一番のヒーローよ」
ふわっと優しく微笑んだあす、っ梅雨ちゃんに、相澤先生は目を大きく開いて何か言いたそうにした後、ふっと目を伏せた。
「……そうか」
「ええ」
「……ありがとう、な」
「こちらこそ、だわ」
相澤先生の表情がさっきより軽くなったことに、僕はほっとした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1946人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
研磨LOVE - お話も面白く、絵もNAOKIさん……最高すぎます！これからも更新頑張ってください！ (2018年3月17日 8時) (
レス) id: 35f41412ab (このIDを非表示/違反報告)
ホタル(プロフ) - イラストがっ…！！素敵すぎます！！ (2017年12月25日 23時) (レス) id: e79370225b (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 本題ですが、この小説は続編に行きます！話数の関係でお知らせできなかったので、失礼ですがここでさせていただきました！もしまだ付き合っていただけるという方がいらっしゃれば、後もうしばらくお付き合いください！ではまた！ (2017年12月25日 20時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
●龍●(プロフ) - 皆様、いつもいつも暖かいコメントを本当にありがとうございます！皆様のコメントのおかげで、ここまで来ることができました！本当にありがとうございます！！そして返信できなくてすみません！ですがきちんと一つ一つ大事に読ませていただいているのでご安心下さい！ (2017年12月25日 20時) (レス) id: 5b64b63f06 (このIDを非表示/違反報告)
プリン - ふオォォォォォォォォォ！絵うますぎる(真顔) かっちゃんかっこいい！！更新頑張ってください！！応援しております！！ (2017年12月24日 0時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：●龍● | 作成日時：2017年8月6日 17時
