君の他には何にもいらないよ

お前はかわいくない ybin ページ37

やぶいの 高校生
かわいいいのおくんと独占したいやぶくん
……………………………………………………………

いつも通り、登校前に待ち合わせ。

やぶ。
って、少しだけ低い位置から聞こえる甘い声。
振り返れば、これまた可愛らしい顔をした、男。

「お、今日も可愛くないな！いのお」


ちょっと長めの黒髪、制服はきっちり着てる。
はっきり言って冴えないけど、こいつはこれでいい。

他の奴らに取られたくない一心で、小さな頃から伊野尾に「お前は可愛くない」って言い聞かせた。
最初の頃こそ不貞腐れていたけど、今では伊野尾も慣れたもので。
そうだね、なんて軽く流せるようになっていた。

けど、それはもはや暗示の領域に入っていたらしい。

そのせいでちょっと引っ込み思案で、自己評価が低く成長してしまったが、まあ結果オーライ。

高校生になった今でも俺にべったり。

積極的に交友関係を広げるわけでもなく、学校で離れるのは授業中だけ。
といっても席が端から端なだけなので、実質一日中一緒。

これでいい、ずっと俺の側に居ればいい。

と、思っていた矢先のことだった。


「は」

登校前。
いつも通り、やぶ、って呼ばれて、振り向いたら、いつもの黒髪のあいつは居なくて。

「いのお…」

髪を明るく染めて、流行りのマッシュカット。
制服はいつも通りきっちりだけど。
せっかく、今まで隠してきた可愛らしい顔がはっきり見えていた。

「おはようやぶ」

俺、かわいい？

って、恥ずかしそうにはにかんだ目が、期待を含んでいるのはわかったけど。



「…かわいくない」


これは俺の意地。

(続)

かわいくなりたい ybin→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す