維―つなぐ―3

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「あなたは…灰谷先生ですね。フェローの。説明していただけませんか」




弁護士にそういわれるが
横に座っていた白石先生が立ち上がり



「私がご説明します」




あの時の事。私も初めて知る




……墜落する寸前、

灰谷君が現場からの状況を聞いて
パイロットに着陸を急ぐよう声をかけたらしい




それを聞いた理事長と弁護士は顔を曇らせる




「…マニュアルには、医師が運航に関して口出しすることは禁止になっていますよね」





…その通りだ。



たとえ現場がどんな状況でも
…パイロットへの指示は、
一番やってはいけない事だった




勿論、それを弁護士にひどく怒鳴られる




患者の死亡と因果関係はなかったとしても
患者の遺族側がこれを知れば裁判沙汰もあり得る





医者という





人の命を預かっている限り





マニュアルは





…破っててはいけない





私も一度その経験があるからわかる






一度の破りが





大きく人生を変える事





経歴も、
心も、




全てが狂ってしまう





「……Aｯ…！」




橘先生に名前を呼ばれふと我に戻る





『……すみません』




気づいたら終わっていて
後日、処分を通達されるらしい




「……思い、出していたか」




『…はい…』





橘先生も当事者だったからすべてを知っている





「あの時も…今回も、お前のせいでもなければ灰谷のせいでもない。心配するな」



『…そう…ですね』





救命へ戻る途中。
白石先生の横で話す灰谷先生の姿を見て





『……立ち…直れますかね』






"僕のせいで"



"私のせいで"






「そういうところ…お前にそっくりだからな」





自身を責めて
自身で潰してしまう心






深い傷を追えば





立ち直るのに





時間がかかること





そして…




『…彼に…できるでしょうか』






その傷を埋めるのも






「……わからん」





彼自身であることに






自身が気づくのは





自身がそうなってからじゃないと




誰も、気づかない―――――

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