維―つなぐ―3

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ｶﾞﾗｶﾞﾗ




ｶﾞﾁｬﾝ





病室に入ったと同時にコップの落ちる音が聞こえ




中に入っていた水が床に広がる





「…佐藤先生」



頭に包帯をまいた彼女は



うっすら涙を浮かべていた




近くにあった布巾で床を拭き



病室内にある蛇口で布巾を洗う




「コップを持つこともできない


…布巾を、絞ることも出来ない」




その泪の向こうに見えたのは




「藍沢先生のせい」





“怒り”





だった





「藍沢先生のせいでこうなった」





『…違う』




藍沢先生のせいだと思っている彼女





だけど、実際はそうじゃなかった




『あの時、ICUの患者さんが急変したの



私だけじゃ出来ないから…藍沢先生を呼んだ』





「…どうして」





『…緊急手術になって終わって脳外科へ戻ったら手術は新海先生がやったみたいでもう終わっていた』





一度引いた彼女の泪




また、流した泪は





今度は





私と新海先生に対する怒りだった



「…なんで藍沢先生呼んだの



佐藤先生1人でもできたんじゃないの?!」





あぁできた




本来なら、私ひとりでもできたんだ





…麻痺さえ…無ければ




勿論それは言う事ない





藍沢先生のせいにならないのであれば






…一生言わないつもりだ






「…これは佐藤先生と新海先生のせいなんだね」






『新海先生は全力を尽くした…あれは藍沢先生でも一緒だったと思う



…悪いのは、約束を破らせた私』







新海先生に罪はなかった…ただ一つを除いて





彼らの争いに彼女を巻き込んだこと。





だけどそれは彼女の後遺症との因果関係はない





だから、



「…ひどいよ…佐藤先生」




そう


それでいいんだ





「…出てって」



その言葉と同時に



RRRRRR
私のPHSが鳴る



『…ごめん』






最後にもう一度謝り病室を出る








謝罪だけで許されると思っていない







だけど、





それしか言えないんだ

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